トランス脂肪酸、摂取増なら規制検討も 消費者委(2015.5.21)
冠動脈疾患リスクが疑われるトランス脂肪酸の表示を巡る問題で、消費者委員会の食品ワーキンググループ(WG)は19日、摂取量の多い若年層や女性、脂質全体の摂取量が多い人への注意喚起や、バランスのとれた食生活を促すよう、リスク管理機関の取組みをより一層進めることが重要だとする報告書をまとめた。同委もこの報告を受け、トランス脂肪酸の摂取動向等を注視していくという。
トランス脂肪酸を巡っては、以前より食品への含有量表示の義務化を求める意見が同委の調査会委員などから挙がっていたことなどを受け、昨年3月に設置された同WGで検討を開始。以降、有識者ヒアリングなど3回の検討を経て今回の報告書をまとめた。
報告書では、水素添加で油脂を固形化する際の副産物として作られる工業由来のトランス脂肪酸が冠動脈疾患リスクとなる可能性が高いと報告される一方、事業者の自主的な取組みで食品中のトランス脂肪酸含有量は近年減少傾向にあるとした。また、過去の調査などにより、日本人の平均摂取量(エネルギー比)はWHO/FAOが勧告する目標量(1%未満)を下回る0.3%だが、中には1%を超える人がいることや、若年層で摂取割合が高く、またエネルギー摂取量に占める脂質の割合が女性で高いとしている。
このため、現在の平均的な日本人の推定摂取量では健康への影響は小さいと考えられるが、摂取量を増やさないよう、リスク管理機関の消費者庁、農林水産省、厚生労働省に対し、事業者が行うトランス脂肪酸低減の取組みを後押しするよう求めたほか、冠動脈疾患につながる動脈硬化を予防するため、子どものころから気をつけていく予防医学の視点が重要だと指摘した。
報告書は、今すぐに表示義務化などを求めることはしなかったが、今後、摂取量増加が認められる場合は上限量の設置や表示義務付けを検討する必要があるとした。