【新制度この先】不信感抱かれた新制度(2015.6.11)

新制度この先

 「機能性表示食品全体に不信感を抱かざるを得ない」。公開された届出情報を見て、消費者団体22団体、地方消費者連絡組織26団体で構成する全国消費者団体連絡会はそう捉えた。そこに加盟していない消費者団体でも、具体的な疑義情報を商品個別にまとめ、消費者庁に早々と提出した。なかなか進まない届出番号の交付を含め、機能性表示食品制度はスタート2カ月で揺れに揺れている。

検討会報告書と〝かい離〟指摘

 全国消団連は5月26日、新制度ガイドラインの修正を強く求める意見書を消費者庁など国に提出した。同時に、「機能性について科学的根拠の弱い製品、安全性に疑義を抱かれるような製品の届出は止めてほしい」などと訴える要望書を健康食品業界8団体に宛て郵送。記者会見も開き、意見や要望のマスメディア露出を図った。

 意見書、要望書の全文は全国消団連のウェブサイトで確認できる。

 意見書では、国内外の公的機関が安全性に疑義を示した機能性関与成分は「届け出を受理すべきではない」と主張。機能性についても、公的機関が評価したり評価中であったりする成分は、その情報を届け出情報に盛り込むべきだとした。また、「食経験の判断基準をガイドラインなどで明確に示すよう意見するとともに、サプリメントの販売実績を食経験として認めるべきではないとも訴えた。

 こうした全国消団連の意見や要望に色濃く反映されているのは、加盟団体の一つである「FOOCOM(フーコム)」の見解だ。

 同団体代表で、科学ジャーナリストの松永和紀氏は、届出情報をつまびらかにしつつ疑義を申し立てるコラム記事を、団体で運営するウェブサイトに4月以降、継続的に掲載。記事は、「蹴脂粒」を巡る騒ぎの火付け役にもなった。全国消団連事務局は、「フーコムの知見を借りながら(意見書等の内容を)理事会で決定した」と話す。

 フーコムには、食品の新たな機能性表示制度に関する検討会委員の一人も密接にかかわっている。消費生活コンサルタントの森田満樹氏だ。全国消団連の記者会見にも出席、意見書、要望書提出の先導役とも見える同氏だが、先月、今月と行った講演などで、公開された届出情報についてこんな見解を繰り返し述べている。

 「検討会報告書と、今年3月31日に出てきたガイドラインの中身を比べると、こんなはずではなかったと思う部分がいくつかあった。実際に出てきたもの(届出書)を見ると、さらにこんなはずではなかったと思う内容のものが多い」

 検討会報告書とガイドライン最終版の間には、かい離があると森田氏には映る。さらに、ガイドラインに基づきまとめたられた届出書の中身には、一層のかい離があると見ている。全国消団連が訴える不信感の根底には、この「かい離」があることが窺える。

業界団体、「団結し素早く対応を」

 全国消団連の意見書を消費者庁はどう受け止めているのか。

 5月27日に記者会見を行った板東久美子長官は、「改善の余地があるか検討したい」と述べ、慎重に対応していく考えを示している。

 関与成分について公的機関が評価した内容を届出書に盛り込むべきだとする意見に対しては、「結論が出ているものは、届出書類に入れることは可能だと思う」と実現可能性を示唆。ただ、評価途中であったり、その事業者が関わっていなかったりするものについては「情報を出して行くのはかなり難しい」とコメント。一律に届出情報に盛り込むのは事実上困難だとの見方を示した。

 また、食経験の判断基準をガイドラインなどで示す必要があるという指摘については、「検討会報告書を踏まえ、評価する具体的な項目の例を、ガイドラインであげている」とした上で、「食品の中身、形態は多岐にわたる。個別に評価基準を示すのは難しい面があると思う」と述べた。

 板東長官は言う。「この制度はスタートしたばかり。常に改善を加えながら、制度を利用する消費者にメリットのある制度として運用しているように努力したい」

 他方で、届出内容の改善を要望された格好の業界はどうか。「消費者団体ともコミュニケーションを取っていく必要がある」。健康食品産業協議会の幹部はこう認識しているものの、これまでのところ公式的な見解は出していない。

 2日、都内で開催された薬業健康食品研究会のシンポジウム。「きっちり答えていかないと、(届出情報に対して一部の消費者団体が疑義を申し入れている)その意見が正しいものになってしまう危険性を危惧している」。会場からこのような声があがった。

 「米国では業界団体が素早く対応する。その日のうち、場合によっては数時間以内に公式見解を出すこともある。複数の業界団体が一致団結して反論することもある」。会場からの声に対し、消費者団体やネガティブ報道に対する米国サプリメント業界の対応についてこう答えたのは、在日米国商工会議所ダイエタリーサプリメント小委員会委員長として登壇していた天ケ瀬晴信氏。次のようにも述べた。

 「一つの企業が言う(意見、反論する)ことも大事かも知れない。ただ、業界全体がまとまって素早く動くことが非常に重要だと思う。日本はそこが後手に回っている印象がある」

Clip to Evernote

ページトップ