制度のいまを総括 潰せば良い面も消える(2015.7.9)
機能性表示食品の現状と課題をテーマにした「第34回健康食品フォーラム」(医療経済研究・社会保険福祉協会主催)が7日、東京・千代田区の全社協・瀬尾ホールで開催された。話題性が高いテーマとあって、会場には食品企業など関係者約250名が参加した。なお、同フォーラムはこれまで一般を対象に無料で行っていたが、今回からは会員制となった。
4講演とパネルディスカッションが行われ、初めに講演した消費者庁の岡田憲和審議官は、機能性表示食品制度は消費者の商品選択に資するものであると強調。届出企業には「消費者に自らが情報を開示しているという意識を持ってほしい」と語り、消費者目線での制度活用を求めた。
現在の運用状況については、届出情報の記載漏れやミス、異なる様式で資料が作成されているものがあり、その分チェックに時間がかかっていると語り、先月公表した留意事項を活用するなど企業に協力を求めた。
同氏はまた、届出そのものは行政処分の対象ではないが、届出後に根拠がないことが判明すれば機能性表示食品から外れ、機能表示が食品表示基準違反に抵触し、指示や命令の対象になると語った。また、安全性に関しては食品衛生法で担保されると付け加えた。
一方、消費者への普及啓発については、パンフレットや説明会の活用を挙げたほか、食生活のバランスを基本に、制度をどう活用するかが重要だと指摘した。また、健康食品アドバイザリースタッフなど、「消費者との間に立って(制度を)説明できる方は重要」としたが、活用については具体策を示さなかった。
東京農業大学大学院の上岡洋晴教授は、機能性評価手法の一つであるシステマティックレビュー(SR)の質をテーマに講演。SRの質を確保するにはPRISMA声明やコクランに準拠した基本手順に沿った方法で行うことが重要と説明。機能性表示食品向けに企業がSRを行う場合、文献スクリーニング担当者やバイアスリスクの評価担当者を複数置き、チームを結成してミスを防止することなどを指南した。SR実施に自信が持てない場合は、エキスパートに指南を仰ぐか、専門機関への委託が必要とも語ったが、全てを丸投げする場合、その評価を全面的に信じることができるか、消費者から質問があったときにどう回答するかを考えておく必要があるとも語った。
科学的根拠は「玉石混交」
一方、現在同氏を中心に機能性表示食品に届けられた食品のSRを評価する研究を進めていることにも触れ、届出られた機能性表示食品のSRを全て調査すること、研究ではSRの質のほか、パッケージの機能性表示の記載内容が実際の統計的な効果を反映しているかなども調べると語った。調査は11月までに届出られた全商品のうち、SRを実施したものを対象にするという。
帝京大学の大野智特任講師は、ランダム化比較試験のポイントを解説。今回の機能性表示食品の特徴として、混合物など複数成分でも機能性表示が可能であること、表示は科学的根拠に基づく表現でなければならず、「膝に良いなど曖昧なものは受理されていない」と語り、科学的根拠がはっきりしていれば、トクホよりも成分や表示の自由度が高いことを挙げた。
また、何かと問題視される利益相反については、「企業が資金提供しなければ臨床研究が進まないのは医薬品も同じ。それをきちんと明示すればよい」と語った。
国立健康・栄養研究所の梅垣敬三情報センター長は安全性情報を中心に解説。効果があるものは有害事象が起こりやすいと語り、例としてフランスで注意喚起が行われた紅麹のモナコリンによる筋肉や肝臓障害、またアレルギー症状など一部の人に出る副作用に注意を促した。同氏は届出企業に、こういった健康被害情報は事前にすべてを把握するのは困難だとして、販売後は積極的に情報収集してほしいと語った。
パネルディスカッションでは特定保健用食品(トクホ)も含めた食品の機能性表示制度が話題となった。梅垣氏は「機能性表示食品はいろいろ批判はあるが、『いわゆる健康食品』よりも評価できる。食品全体をみて、その中で機能性表示がどのような位置づけであるかを理解してほしい」と語り、国が審査したトクホを含めた全体で機能性表示食品がどういうものであるか理解するよう求めた。
上岡氏は公開された届出資料の科学的根拠情報について「玉石混交」と表現。「良いものもあれば結果と考察が全く同じものもある。制度は始まったばかりで今後どう良くすればいいかの視点での議論が大事。これはダメという議論ではいけない」と語った。大野氏も「届出情報に対する消費者団体の指摘はその通りだが、それをもって制度そのものが悪いといった新聞記事も出ている。そうではなく、制度は始まったばかり。潰してしまえば考えられるリスクはゼロになるが、良い面も潰してしまう」と語り、「消費者、企業がお互い勉強し合ってよい制度にしていくのが大事だ」と語った。
【写真=左から岡田憲和審議官、上岡洋晴教授、大野智特任講師、梅垣敬三情報センター長(7日、東京・千代田区)】