新たな研究会始動 開発支援も Tie2研究会(2015.11.12)
「Tie2(タイツー)」と呼ばれる血管やリンパ管に存在する受容体の活性化を通じ、加齢や生活習慣病による様々な疾患や不調対策に資する機能性食品などの研究開発を促進しようと、著名な血管研究者が率いる研究会が先ごろ発足し、設立集会も兼ねた第1回学術集会が10月23日、都内で開かれた。会長は、聴講に訪れた業界関係者に、共同研究を呼び掛けた。
集会を開いたのは「Tie2・リンパ・血管研究会」。日本血管生物医学会理事長で、大阪大学微生物病研究所の高倉伸幸教授が会長を務める。集会には約150名の業界関係者が参集した。
同会は、Tie2の活性化をめぐる学術講演や企業研究発表の場として過去4年間にわたり開催された「Tie2フォーラム」が前身。フォーラムで講演してきた高倉教授をはじめとする識者や事業者が中心となり、血管やリンパ管の最新情報も取り込む目的で研究会に発展させた。法人会員には資生堂、サントリーウエルネス、ポーラ化成工業、江崎グリコ、全薬工業のほか、丸善製薬など計10社(9月30日現在)が名を連ねている。
Tie2とは、血管の内皮細胞に存在する受容体を指す。血管の外側の壁細胞から分泌される「アンジオポエチン‐1」と呼ばれる物質により活性化され、血管の内皮細胞同士、または内皮細胞と壁細胞同士の接着を介して血管構造の維持・安定化に寄与する重要な役割を果たしているといわれる。
学術集会で講演を行った高倉教授は、「Tie2を活性化する物質があれば、血管構造を維持し、かつ血管透過性を改善でき、漏れのない血管をつくることができる。これによって、加齢や生活習慣病による血管障害が原因となる様々な疾患の予防が可能になるのではないか」と述べた。その上で、エボラ出血熱ウイルスなどに感染して死んでしまうマウスは、Tie2活性が非常に弱っていることが確認されているなどといった研究事例を紹介した。
高倉教授はさらに、Tie2を活性化することで予防が期待できる疾患として、敗血症のほか、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、緑内障といった眼疾患などを挙げつつ、Tie2活性などにより血管透過性を改善することの意義として、「これまで組織に充分入っていけずに本来の成分の効果が出せなかった物質も、組織深部に入り込んで効果を出せるようになる」こともあると語った。
この血管透過性の改善効果に着目し、Tie2活性作用のある機能性食品素材の開発を積極的に進めているのが、Tie2フォーラムをサポートしていた丸善製薬。ヒハツエキス、月桃葉エキス、ハス胚芽エキスなどといった天然素材に同作用があることを明らかにし、これら「Tie2活性素材」を配合することで、血管構造の安定化と同時に、主要素材・成分の機能効率を高めることも期待できるとして、副素材としての配合メリットを訴求している。
高倉教授によれば、Tie2を活性化するアンジオポエチン‐1は、「生体内では早く分解されてしまう物質で、工場で製造しようとすればコストがかかり、実用化しづらい」という。
このため、「健康的な血管を維持していくという意味では、一時的にではなく長期的にTie2を活性化していくことが重要であり、比較的安価に摂取できる機能性食品の開発が求められる」と講演で語り、研究会の今後の活動方針として、「血管構造を安定化することにより疾病を改善する、あるいは予防するというアプローチから研究会を盛り上げていきたい」と述べ、研究者のマッチングなども行いながら、商品開発につながる基礎研究や臨床研究をサポートしていきたいとした。