美容医療契約を対象に 特商法検討後半戦へ(2015.11.12)
特定商取引法の改正に向けた消費者委員会の検討が後半戦に入った。10月26日、同委の特定商取引法専門調査会(後藤巻則座長・早稲田大学大学院法務研究科教授)が2カ月ぶりに再開。今後の論点を7点に絞ることを決めたほか、11月6日には美容医療契約を同法の適用対象とし、対象の範囲について施術ごとに具体例を示す方向で議論を進めていくことにした。
いずれも難題
同調査会は内閣総理大臣の諮問を受けて同委が設置を決め、今年3月から検討を開始、8月にはそれまでの議論を中間整理にまとめた。その後は、9月に第4次消費者委員会が発足したことや、中間整理に対する意見募集を行ったこともあり、2カ月間開催されず、ようやく10月26日に再開した。委員も3次の消費者委員会が任命した全委員が留任し継続性を保った。
その10月26日の会合では、事務局が今後の論点として7つに絞ることを提案、了承され、今後はこの論点に絞って議論を進めていく。
事務局が示した論点は①勧誘に関する規制②販売事業者等によるクレジット・金銭借入・預金引き出しを勧める行為等に関する規制③アポイントメントセールスにおける来訪要請方法④虚偽・誇大広告に関する取消権⑤通信販売事業者表示義務⑥美容医療契約の取扱い⑦執行上の課題――。いずれも中間整理までに十分な議論ができなかったものや、委員間で方向性が一致していないものとなる。一方、既に一定の方向性が出されている論点は、最終とりまとめの段階で書きぶりや文言等の修正で対応することで折り合った。
また、今月6日の会合では美容医療契約を取り上げ、同法の適用対象にする方向で今後議論を進めることを決めるなど、これまでになく委員の意見が一致した。
2度の建議
美容医療契約や販売に関する消費者相談は、PIO‐NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)集計で2011年の1166件から14年には1973件と、およそ1.6倍に増加している。また、消費者委員会は11年12月と今年7月に、この問題に関する建議を取りまとめ、健康被害等に関する情報提供や安全性の確保、広告規制のほか、十分な事前説明の必要性を訴えた。同じ問題で2度の建議というのは異例であり、委員の考えにも影響を与えたといえる。
ただ、この日ヒアリングした日本医師会や日本美容外科学会などの関係団体からは、保険診療を阻害する仕組みとなることに反対の意見や、医師法との二重規制になるとの懸念が伝えられ、特商法の規制対象に含めるにしても、疾病治療や健康状態の改善につながる医療行為と、美容を主目的とする医療行為とは明確に区別するよう、慎重な検討を求め、委員からもこれに賛同する意見が出た。
規制強化、慎重意見が多数 中間整理に4万件超す意見
消費者委員会が9月に実施した「特定商取引法専門調査会」(後藤巻則座長・早稲田大学教授)の中間整理に対する意見受付に4万315件の意見提出があったことが、10月26日開催の同調査会で事務局が報告し明らかになった。意見は個人や団体などの区分けはせず、どういった立場で提出したかは不明だが、4万件を超す意見が集まったのは異例で、特商法改正に対する関心の高さをうかがわせた。
意見は同調査会が議論した論点ごとに整理。このうち、規制や訪問販売・電話勧誘に関する総論的な意見、勧誘規制に関しては、規制強化に積極的な意見が545件だった一方、規制強化に反対または慎重な意見は3万9428件にのぼった。積極的な意見では、消費者が対面で断ることが難しいことを踏まえ事前に勧誘拒否ができる制度の導入を求めるものや、生活の平穏の権利を尊重すべきとの意見のほか、運転免許のような点数制を導入し、ゼロになったら一定期間営業禁止や指導などの義務を負わすといった提案もあった。
一方、反対や慎重な意見としては、悪質と健全業者を区別なく一律に規制強化することは問題であること、法規制強化以前に執行強化や自主規制強化を行うべきとの意見があった。
懸案事項の一つである通信販売の虚偽・誇大広告の取消権に関しては、規制に積極的な意見が28件あり、通信販売において広告表示は消費者の購入にかかる意思形成に与える影響は大きいとして、取消を可能とする規定を設けるべきとの意見があった。一方で反対や慎重な意見は9件で、通信販売に限って起こる問題ではなく、取引形態も含め検討することや、景品表示法で課徴金を課す規定があるほか消費者契約法が検討されているとして慎重な検討が必要との意見があった。
事前参入規制では、業界多数が歓迎する登録制を導入すべきや、行政処分などの実効性が向上するといった積極的な意見に対し、社会経済に与える影響が大きい、参入障壁を生み起業やイノベーションの妨げになるといった慎重な意見があった。
なお、この意見の扱いについて事務局は「中間整理に記載のない意見もあり、今後の審議でこれら(の意見)を含めた議論を頂きたい」と説明。委員からは「件数の多い少ないは絶対的なものではない」など、数によって議論の方向性などが変わらないことを確認した。