現代書林が逆転勝訴 警察発表で名誉棄損(2015.11.26)


 いわゆる「バイブル本」の出版をめぐる薬事法(現薬機法)違反に問われたものの無罪が確定した出版社、㈱現代書林(東京都新宿、坂本桂一社長)と同社元社長や編集者らが、逮捕時の神奈川県警による虚偽の発表で名誉棄損されたとして神奈川県を訴えていた国家賠償請求訴訟で、東京高裁は18日、1審の東京地裁判決を取り消し、名誉棄損を認め、県に176万円の損害賠償の支払いを命じた。

 県警は逮捕時の2011年10月6日に行った記者発表で、問題となった書籍について「ほとんど虚偽あるいは被疑者らが作り上げた内容」だと説明。これを多くのメディアが報じ、神奈川新聞は「今回の事件は詐欺に近い行為で、非常に悪質」などとする記事を社会面に大きく掲載した。

 現代書林側の弁護人は判決を受け、「公式の記者発表の内容が名誉を棄損して違法であったことを正面から認めるものであり、画期的な判決」だとのコメントを出した。

 判決によると、高裁は記者発表の根拠となった捜査資料は書籍に発言が掲載された医師や研究者、体験者ら計19名のうち4名のみに関するものだったとし、捜査が足りないまま発表した県警の落ち度を指摘。県警が「ほとんど虚偽」だとした内容についても、「(その)事実を認めるに足りる証拠はない」「取材を行っていないとの事実を認定できる者はひとりもいない」と判断した。

 1審では、書籍に発言が掲載された一部の医師の「取材を受けた記憶はない」「無断で掲載された」といった証言などから県警発表は真実性が証明できるとして原告請求を棄却。一方、高裁は一部の医師は現代書林から取材費を受け取っていることなどから「供述は十分に信用することができない」と指摘した。

 現代書林が都内の健康食品販売会社とタイアップして02年に出版した、特定の健康食品原料の効果・効能に関する医師や体験者などの発言を集めた書籍をめぐっては、神奈川県警が未承認医薬品の広告行為に当たるとして同社元社長らを逮捕、しかし横浜地裁は13年5月、医薬品性が認められないなどとして無罪を言い渡し、確定していた。

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