日本コルマー 神崎友次会長に聞く(2015.12.10)
ASEAN 工場進出を計画 化粧品受託の成長戦略
2015年3月期連結売上高が前年度比7%増の266億円と、11期連続の増収を達成した国内化粧品受託製造最大手の日本コルマー。「グローバルNo.1 ODM/OEM企業」を目指す同社はどのような成長戦略を描いているのか。健康産業流通新聞の前号(第909号)で掲載した化粧品OEM特集に関連し、国内化粧品市場の現在や今後も交えながら、神崎友次会長に話を聞いた。
──酵素・酵母食品をはじめとする健康食品は今年、いわゆる「インバウンド需要」の恩恵を一部受けました。化粧品はいかがでしたか。
経済産業省の出荷額統計によれば、14年の国内化粧品市場は前年比約4%増の1兆4880億円と、08年のリーマンショック以前の1兆5000億円の水準にはまだ達していないが、かなり回復してきた。ここ数年は微増・微減を繰り返しながらの横ばい傾向で推移していた中で、4%増というある意味で異常な大幅伸張の背景にあるのは、インバウンド需要の影響だと見ている。
ただ、中国人を中心とした来日観光客によるインバウンド需要は一過性のものではないか。化粧品にせよ、健康食品にせよ、日本製商品に対する信頼感が高いのは間違いないが、中国政府が内需拡大に向けた取り組みを強化していることなどもあり、長期的には期待できないと思う。
──17年3月期連結決算では売上高300億円を目指しています。15年3月期比で見ると約34億円の売上増を図ることになります。
化粧品ブランドメーカー大手は海外市場で売上を伸ばしている一方、国内市場は少子高齢化、人口減少の影響を受け、今後も低成長状態が続くと見られる。そうした中でブランドメーカーは、老朽化した工場を改修するための設備投資だったり、売上や利益に直接的には結びつかない研究開発に多大な費用を投資したりできるだろうか。工場の再編や研究所の合理化などを考えざるを得ないと言える。
すると必然的に、製造と研究開発のアウトソーシングが進む。これまでも進んできたし、その流れは今後より加速していくだろう。そのためOEM業界は、安心して外部委託してもらうためにも、生産能力や品質管理能力はもとより、研究開発能力をブランドメーカーと同等、あるいはそれ以上に高めておく必要がある。
当社でも、「ワンストップトータルサービス」を掲げながら、あらゆる手立てを講じており、最近では東日本エリアに研究開発・生産拠点を新たに整えた。これにより、これまでは難しかった関東圏の優秀な人材を確保するなどして国内のさらなる足場固めを進めている。また、ブランドメーカーはアジアなど海外進出の意向を強く持つ。こうした企業をサポートする目的で、既存の中国、韓国に加え、ASEAN域内での工場建設を具体的に検討しているところだ。
──国内化粧品市場は今後も低成長が見込まれる一方で、健康食品業界などからの新規参入は止まりません。そうした異業種からの新規参入に商機はあるのでしょうか。
大手のブランドメーカーも苦労しているのだから、化粧品はそう簡単な市場ではない。異業種から化粧品市場に参入しても、広告宣伝に多大な投資を行える大手企業であれ、売上高や利益を順調に伸ばしているような企業はそう多くはない。
一方で、単品で3000万個の販売実績を上げるなど、中小企業で成功事例が多く見られる。とりわけ通販企業だ。近年の新規参入企業の大半が通販となっており、通販でないと新規参入は難しいという側面もある。通販は企業規模の大小を問わず化粧品の販売を比較的低いコストから始められるし、化粧品は参入障壁も低いからだ。
ただ、一般小売流通をメインにしてきたブランドメーカーが通販など新たな販売チャネルに展開し始める動きが出ているが、苦戦している先も少なくない。通販だから安泰というわけではない。通販で化粧品市場に新規参入した企業が、販路を店販に拡大させていく動きも今後は多く見られるようになるだろう。
(聞き手=本紙記者・石川太郎)
日本コルマー=大正元年(1912年)創業の化粧品受託製造企業。本社は大阪市中央区、東京港区に支店。基礎化粧品からフレグランスまで幅広く対応しており、工場は全国4カ所(八尾、柏原、出雲、静岡)、研究所も同じく4カ所(八尾、柏原、出雲、横浜)に展開。平成2年に韓国コルマーを設立、中国・蘇州にも工場を置くなど海外にも展開している。