創立10周年のドクターセラム 吉川育矢社長に聞く(2015.12.10)
次の10年 機能性表示〝節目〟
独自素材「シルクフィブロイン」を活かした健康食品のOEMや卸売販売を展開するドクターセラム(東京都渋谷区)は今年、会社創立10周年を迎えた。11月26日に東京・椿山荘で催された記念式典には、取引先を中心に約170名が参加、10年の節目を盛大に祝った。「設立時は今後どうなるか分からない状況だったが、皆さまのお力で10周年を迎えられた」と感謝の念を式典で述べた同社創設者の吉川育矢代表取締役社長に、次の10年について尋ねた。
独自素材シルクで対応
──10周年おめでとうございます。今日は、これまでの経緯を踏まえつつ、今後の10年についてお考えを聞かせてもらおうと思っています。
最大の節目となりそうなのは、やはり機能性表示食品。シルクフィブロインを機能性表示食品にしようと、最終商品を使った臨床試験を進めています。試験計画を倫理委員会に許可してもらい、過剰摂取試験を終え、安全性を改めて確認しました。機能性を評価するための臨床も始まっていて、いま、3カ月が経過した段階です。
──まずはドクターセラムとして届出を行い、その後OEMなどを市場に通じて広げていく計画です。届出はいつ頃になる見通しですか。
臨床試験の終了は来年6月ごろを予定していて、その後査読付き論文として投稿することを踏まえると、夏か秋ごろでしょうね。ですから来期(16年12月期)は勝負のための準備の年、本当の勝負はその次の期から始まります。
──次の10年の節目がシルクフィブロインの機能性表示食品化であるのはなぜ?
シルクフィブロインという素材やそれを配合した商品が、独り歩きできるようにする必要があるから。ドクターセラムを率いるのが誰であろうと、シルクフィブロインが市場に絶えず流通できるようにするための準備をしておきたい。そのために機能性表示食品にする必要があるし、必ずそうします。
──以前からロングラン商品にしたいと話されていました。そのために機能性表示食品制度に乗るということ?
そう。何十年と売れ続けている商品がありますよね。そうした商品は商品自体が独り歩きできていて、本当に良い商品とはそういうものだと思う。ただ、そうした商品の中には制度のルール上、機能性表示食品になり得ないものもある。しかしシルクフィブロインはそうではない。多くの人に摂取いただく、それにより医療費の削減に貢献するというのが会社設立以来の目標で、そのためには商品の力を一層伸ばしていく必要がある。機能性表示食品制度の創設によって、シルクフィブロインという商品を育てていくためにも良い状況が整ったと捉えています。
商品力をさらに伸ばす
──機能性表示食品になることで売り先も広がるかも知れません。
実際、機能性表示食品になることを条件に、調剤薬局や通販企業から引き合いを頂戴し、具体的な話も進んでいます。特に通販企業からは、最終商品の臨床試験で機能性を評価することもあって、広告宣伝の面も踏まえた期待感が大きいと感じます。これまでの市場はクローズドマーケットが中心でしたが、機能性表示食品にすることで市場が広がる。勿論、引き続きクローズドマーケットでの展開も進めますが、経営の更なる安定化という観点からは、市場の拡大が求められることは言うまでもありません。
──「会社設立時は今後どうなるかが分からなかった」という式典で挨拶されました。
シルクフィブロインの生産は実は非常に難しく、商業ベースに乗せるための生産方法を確立できるまでに相当苦労しました。せっかく調達した原材料をたくさん無駄にしたり、高額の生産機器を壊しそうになったこともあったり。最初の1年は本当に苦しかったのですが、生産方法の確立に尽力して下さった協力工場の関係者や、前職からお付き合いのあったエステティックサロン、そのほかクローズドマーケットに展開する幾つかの企業に助けていただきながら、どうにか乗り切れました。
この10年を振り返ってみると、苦しい時に手を差しのべて下さる方がいたからこそ今がある。本当にそう思います。ですから次の10年は、引き続き皆さまのお力も借りながらですが、シルクフィブロインという商品の力そのもので、会社を伸ばしていく必要があると考えています。
(聞き手=本紙記者・石川太郎)
シルクフィブロイン=東京農業大学農学部の長島孝行教授とドクターセラムらが共同開発した健康食品素材。シルクに含まれるタンパク質のうちシルクフィブロインのみを抽出・精製したもの。吸着性多孔質を持つため体内の余分なコレステロールや脂肪などを吸着、体外に排出する機能があると考えられている。同素材のみを配合した最終商品を使ったヒト摂取試験も日本国内で行われており、これまでの被験者数は延べ1900人。これにより、中性脂肪、血糖値、コレステロール値などの低下作用を持つことが示唆されている。