安全性、消費者教育を重視 阿南消費者庁長官が講演(2013.10.24)
医療経済研究・社会保険福祉協会主催の健康食品フォーラムが23日に開催され、来年度中に創設する機能性表示制度の検討状況について、消費者庁の阿南久長官が特別講演した。阿南氏は消費者の権利確保を基本に、制度検討を行っていく考えを伝え、安全性確保や消費者への適正な情報提供、消費者教育の強化を重視する考えを伝えた。
阿南氏はまず、同庁の基本スタンスとして、6月に公布された食品表示法の目的に掲げる、食品の安全性と消費者の自主的かつ合理的な食品の選択機会の確保が重要だとしたほか、昨年12月に施行された消費者教育推進法にある消費者の自立支援のための消費者教育の強化、拡充の必要性を強調した。
今後の制度検討においてもこれを踏まえ①安全性確保の仕組みを構築②消費者の自主的・合理的選択の保障③根拠のない表示・広告、悪質な販売方法に対する取り締まり強化④バランスの取れた食生活が基本であることの理解促進と、健康食品の安全な活用のための消費者教育・啓発、情報発信を強化――を同庁の基本的な考え方として重要視する方針を伝えた。
ただ、具体的な中身については「米国のダイエタリーサプリメント制度を参考に、日本に合った制度にしたい」と、これまでの原則論を改めて述べるにとどまった。スケジュールについても、間もなく開始する消費者意向調査の結果を踏まえ、有識者に意見を聞くとの従来の方針を伝えた。
講演後の質疑応答は機能性表示に関する意見や質問が集中。会場から科学的根拠レベルについて問われたときは、「表示の根拠は事業者が示すもの」と回答、景品表示法第4条2項の不実証広告規制の指針を一つの判断材料として示した。
また、製品リコールや有害事象などの情報収集体制の確保は、中小企業には負担との意見に対しては、「安全性確保が大前提。この対策が取れない企業は参入してはならない」と語る一方、これについては業界で協力して対応を検討するべきとも語り、業界の自主的な努力を促した。
会場からはほかにも、科学的根拠の判断レベルや基準等について国際的な整合性を求める声や、新たなデータを加えなくても海外に輸出できるような仕組みづくりを求める意見が出た。
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同フォーラムには農林水産省の櫻庭英悦大臣官房審議官も登壇。櫻庭氏は健康食品とともに可能となる農産物の機能性表示について、医農連携や農研機構を主体にしたプロジェクトでエビデンスの蓄積を進めていると説明。また、「(米国制度には)リコール原則があり、企業の抗弁の機会などルール化されている。(日本も)こうしたことがルール化されて初めて企業の責任で(表示)できる」と語り、表示以外のルール化の必要性を指摘した。