関与成分検討会 議論に広がり 先行きは(2016.2.11)

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 機能性表示食品制度の「積み残された課題」を議論する検討会が始まった。機能性関与成分の取扱いが主な検討課題だが、それをそっちのけに制度運用に関わる意見・要望を発する委員も目立った。消費者庁は検討会の設置概要に「(新制度の)運用改善等についての意見聴取」も併せて行うと明記し、検課課題に「その他」も掲げる。ただ、同庁が示した検討スケジュール案にはその他を検討する余裕は見当たらない。可能なものは届出ガイドラインの改正で素早く対応し、制度の根幹に関わるような意見は今後の議論に持ち越す──そんな今後を見通している節も窺える。

消費者庁「あくまで意見聴取」

 1月22日の初会合には消費者庁の板東長官と川口次長がそろって参加した。挨拶に立った板東長官は、新制度施行以後、「事業者、消費者の方々からさまざま、運用上の問題を指摘されている」とした上で、「制度運用後に出てきた課題についてもご指摘いただきながら、我々としても改善していきたい」と述べ、制度運用の改善に向けた意欲を示した。

 一方、同庁食品表示企画課からは、今回の「機能性関与成分検討会」の検討課題は栄養成分のほか機能性関与成分が不明確な素材・食品の取扱い、またその関連に絞りたい考えも聞こえてくる。制度の運用改善に関しては「あくまでも意見聴取」──。

 しかし、この日の会合では制度の運用状況に関する厳しい指摘と改善を求める声が委員から相次いだ。雰囲気的には意見聴取だけではとても済みそうにない状況だ。

 新制度施行以後2回にわたり「問題を指摘」する意見書を同庁に提出していた全国消費者団体連絡会。その事務局長で、前回に引き続き検討委員を務める河野康子氏は、「現在に至っても確たる答えはいただけていない」と意見書のその後について述べ、同庁の対応を批判。その上で「(検討課題を議論する)大前提として制度の運用状況の確認が必要」だと主張した。

 また全国消団連との関係も浅くない消費生活コンサルタントの森田満樹委員は、「運用面でさまざまな問題がでてきている」と述べ、サプリメント形状の加工食品の食経験にも言及し、「判断(基準)が曖昧」だとしてガイドラインの見直しを要求した。

 一方、「制度については一定の評価をすべき。いわゆる健康食品の中からエビデンスのあるものを抽出し、不明確なものとの差別化を明確に図っていく制度」としつつも、届出制の仕組みには「不安感というか不信感が伴う」と述べたのは日本栄養士会専務理事の迫和子委員。情報公開や事後チェックだけで品質や安全性を担保できるのかと、新制度の根幹そのものを疑問視した格好といえそうだ。それもあり、成分の対象拡大を行うのは「時期尚早」だとも述べた。

 国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広委員も、「(機能性関与成分の)分析法が開示されていないのが非常に大きな問題点。(このままでは第三者が)誰も(品質を)チェックできない」と、品質の担保の観点から情報開示のあり方に苦言を呈している。

制度の根幹 来年以降に議論?

 こうした委員からの声に座長の寺本民生・帝京大学臨床研究センター長も同調する。初会合の終盤、「今回(の検討課題)はこの二つ(だけ)というわけにはいかない。(制度の)根幹の問題もやはりある。情報開示の課題など、そうした議論も一緒にしておかないと、新たなものを加えた時にもっと複雑になる可能性がある。場合によっては、(制度の)ベースのところを整理することも考えてよい」と述べ、検討課題と同時に制度全体を検証する必要性に言及した。

 ただ、寺本座長はこの発言の前、「本日いただいた意見は消費者庁の方で運用改善ということでガイドラインの修正等を適宜行っていただくようにお願いしたい」「制度自体の見直しは別途検討が必要になる」と述べ、制度の根幹をめぐる議論は先送りする考えを示していた。委員の声に押されたと言えなくもない。3月末までにまとまる見通しの消費者庁による研究レビュー検証事業や消費者意向調査の結果が、そうした声をより強める可能性がある。

 新制度の設計を中心に議論した前の検討会の報告書では、制度施行後2年をめどに施行状況を検討し、その結果に基づき必要な見直しを行うよう求めている。それを議論するための新たな検討会が、2017年以降に立ち上がることもありそうだ。
【写真=栄養成分の取扱いなど、課題解決に向けた検討が始まった(1月22日、東京・港区)】

(関連記事 「機能性表示 関与成分検討会始まる 10月に報告書」)

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