メッセージに疑問の声 食安委の説明会で消費者から(2016.2.11)

食安委

 食品安全委員会が昨年12月にまとめ、消費者に向けて公表した「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」。特定保健用食品なども含めた広義の〝健康食品〟を「摂るかどうか判断するときに考えるべき基本事項」(メッセージより)を19項目並べ立てたものだ。同委は1月28日、これに関連した消費者対象の説明会を開催。およそ60分にわたって行われた質疑応答では、「健康食品を摂る必要はない」とも受け取れるとも指摘されるメッセージに対し、疑問の声もあがった。

何を食べるか個人の自由

 「何を食べるかは自由でいい。食品である限り規制は必要ない。個人が自由に判断すべき社会にしたい」。質疑でこう意見したのは国立大学の教員という男性だ。「消費者が賢くなれば、自然と(自分の状態に)合うもの、安全なものを選ぶようになる」とも述べた。

 この男性は、行政機関は健康食品を必要以上に規制するのではなく、普及啓発や情報提供に力を入れるべきだとする。「国に頼り続ければ、自分で判断できない状態が続いてしまう。お墨付きを与えるわけでもなく、規制するのでもなく、個人の力(判断力)になるべく任せたほうがいい」

 また、消費生活に関するアドバイスやコンサルティングに従事する女性は、メッセージは「(健康食品に)気をつけろ、使うな」と言っていると理解できるとし、「いま(健康食品を)使っている方の行動を否定することになる」と指摘。その上で「むしろ、健康食品をどのように食生活の中で使うのが良いのか、健全なのか」を示す必要があると意見した。

 19のメッセージのエッセンスを食安委がまとまめると次のようになる。ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがある▽健康食品は医薬品ではない。品質の管理は製造者任せ▽食品であっても安全とは限らない▽多量に摂ると健康を害するリスクが高まる▽誰かにとって良い健康食品があなたにとってもよいとは限らない──。

憲法に見立てる

 「決して(健康食品の利用を)否定しているわけではない」。ワーキンググループ座長としてメッセージを取りまとめた脇昌子・京都大学医学部臨床教授は説明会の中でこう述べ、あくまでも健康食品の摂取が「必要かどうかを考えるための材料」だとする。ただ、その一方で、食安委事務局はこのメッセージを、最高法規である「憲法」になぞらえて語る。

 「国民の皆様方がこれを17条の憲法ならぬ19条のメッセージとしてご活用いただくことによって健康で健全な食生活を送っていただけることを願ってやまない」。当日配布された冊子資料の冒頭には、姫田尚・食安委事務局長の署名付きでこう記されている。姫田事務局長は、「基本的に食品を規制するというのはあり得ない」と質疑応答で述べたが、健康食品は規制したい思いも窺える。

有効性は他に委ねる

 なお、健康産業流通新聞第910号(15年12月11日号)では、このメッセージの内容を報じるにあたり、健康食品の「ベネフィットに目を向けよ」と題した社説を同時掲載した。この日の質疑応答でも、「有効性は議論しなかったのか」と、栄養士の指導・養成に関わっているという男性が疑問を投げ掛けた。これに対して姫田事務局長は、「食安委の仕事は食品の安全性の確保。有効性については消費者委員会や消費者庁に委ねたい」と答えた。

【写真=説明会場になった同委会議室(1月28日、東京・港区)】

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