虚偽誇大禁止の指針を改正 勧告権など地方移譲で(2016.2.25)


 消費者庁は、健康増進法で規定する食品の虚偽誇大表示の禁止に関する執行権限を、4月1日から都道府県などへ移譲するのに合わせ、このほど関連指針(ガイドライン)の改正案をまとめた。3月9日までパブリックコメントを受け付けたあと、同月中旬にも成案を公表する予定。

 地方分権改革に関する関係法律の整備法(第4次一括法)の施行に伴うもので、改正するのは「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)」。同法31条で規定する虚偽誇大表示の禁止に係る事業者への勧告(同32条1項)と、勧告に従わない場合の措置命令(同条2項)の権限を都道府県、保健所設置市、特別区へ移譲するのに伴う改正が柱。現在、都道府県の業務は調査などの監視と、事業者への指導などに限られる。

 案は「現行の解釈を変えるものではない」(同庁表示対策課食品表示対策室)が、現行の指針を策定した厚生労働省の視点から、同庁の視点に書きぶりを改めた。例えば同禁止事項の適用対象者に「新聞社、雑誌社、放送事業者等の広告媒体事業者等も対象となり得る」を加え、同庁が昨年1月に改正公表した「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」と書きぶりを合わせたほか、虚偽誇大の目安になる「著しい」の判断を景表法の考えに近づけた。さらに健康保持増進効果等の定義では、医薬品医療機器法(旧薬事法)で用いる「暗示的」との表現を加えた。

 一方、都道府県の体制の整備にも触れ「栄養学や薬学等の知見を有するものが監視指導にあたるなど、積極的な役割を果たすことが期待される」とした。また、関係部署の連携では、現行の健康増進、食品衛生、薬事関係だけでなく、景品表示法と食品表示法の部署との緊密な連携を挙げた。

 なお、同庁は同指針の成案公表に併せ、虚偽誇大表示の判断の目安になる事例などを集めた同指針の留意事項も改正、公表する予定。

 現行指針は2003年8月に厚労省が策定したもので、近年、景品表示法の考えも取り入れた運用を図っている同庁の考えとは「一部で物足りない表現があった」(食品表示対策室)。

 例えば、「著しく事実に相違する」や「著しく人を誤認させる」の「著しく」とは、表示と実際が異なることをあらかじめ知っていたら取引に誘引されることはなかった場合が該当するが、改正案はこの前に「誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指している」ことを加えた。これは景表法の判例を活用したもので、「広告は多少の誇張は含まれるが、消費者が誤認した場合は『著しく』に該当する」(同)との判断に基づく。

 また、本紙取材で同庁は個別の事例も挙げて説明した。ダイエットサプリの場合「ダイエットを考えていない人には誤認されない表示でも、ダイエットしたいと思っている人が誤認すれば対象」になるという。さらに子ども用サプリは、それを購入する「保護者」に誤認を与えるかどうかが決め手になる。

 ただ、これらは案件ごとの個別判断となり、明確に線引きするのは難しい。指針案で関係部署の緊密な連携を挙げるのも「健康食品は健増法だけでなく、いろいろな法での検討が必要になる」(同)ためであり、また同庁が策定する留意事項の例示も都道府県の運用にとって重要になる。

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