HACCP義務化へ検討開始 厚生労働省(2016.3.10)
健康食品はGMPとの整合性研究
国内の食品衛生管理に国際標準化されたHACCPの導入を目指している厚生労働省は7日、制度の具体的枠組みなどを検討する「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」の初会合を開き議論を開始した。検討会ではHACCPの義務化対象とする食品範囲や対象事業者の規模など国内制度化に向けた枠組みや、義務化対象としない食品に対する任意制度の導入を検討する。また輸入食品がHACCPに適合しているかの確認や監査手法なども議論する。
HACCPは食品の国際規格などを策定するコーデックス委員会が推奨する食品衛生管理手法。製造や加工工程中に発生する恐れがある危害要因を予め分析して重要管理点を設定し、これを連続的に監視することで製品の安全を確保する。諸外国では欧米などを中心に義務化が進められている。
国内では現在、事業者が任意に申請して承認を受ける制度になっている。1998年にはHACCP支援法が成立し、HACCP導入に必要な施設の整備や体制整備に対し長期融資による支援が始まった。これらの支援により徐々にHACCP導入は進み、農水省調査によれば14年度現在、食品製造業のうち食品販売金額が100億円以上の大手で9割近くが導入済みとなっている。ただ、中小零細を含めた食品製造業全体では約3割と低調で、普及は大手に限定されているのが実態だ。
この日の検討会では、予め義務化対象外の食品を設定せず、一律義務化を検討したうえで、対象から外れる食品を選別するよう求める意見があった一方、HACCPは事業者の任意で進めるべきとの意見もあり、早くも委員間の考えの違いが表面化した。このほか、現在の国内制度の概念整理が必要だとして、制度や関係省庁などの取組みの詳細な資料を求める意見や、厚労省が「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」の提言を受けて今年度から実施しているHACCP普及策の効果の検証が必要との意見もあった。
検討会は来月開催の次回会合で海外の制度化の状況や国内での普及、民間制度の状況などの説明を行い、3回目から事業者ヒアリングを実施して議論を深めていく。月1回程度の頻度で開催し、9月には取りまとめ案を策定し、意見募集を経て12月に最終取りまとめを行う予定だ。早ければ17年の通常国会に食品衛生法改正案が提出される。
なお、検討範囲に健康食品の製造も当然含まれるが、一方で同省は健康食品GMP(適正製造規範)を推奨しており、現在、HACCPと健康食品GMPとの整合性について、認証団体のひとつである日本健康・栄養食品協会が厚生労働科学研究費で調査研究を行っている。今月中にも報告書をまとめ同省に提出を予定している。
【写真=初会合のようす(3月7日、東京・港区)】