消費者委、改善22項目を建議 健増法改正など(2016.4.21)

消費者委建議

 消費者委員会は12日、特定保健用食品(トクホ)や健康食品の広告表示による消費者の誤認防止や、トクホ制度の運用改善に向けた対応を、河野太郎消費者担当大臣に建議した。同委の専門調査会報告を受けて取りまとめたもので、これら方策によりトクホの存在意義をさらに高め、また、有効性や安全性が担保されない「いわゆる健康食品」の淘汰を目指す。対応策は全部で22項目。このうち早急な対応を求めた13項目は、10月までに消費者庁に対応状況の報告を求めた。

 同委の「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」(寺本民生座長・帝京大学臨床研究センター長)では、トクホの広告表示や効果の捉え方などについて消費者意識調査を実施。その結果、消費者の7割超が購入時にトクホの許可表示を見ていない一方、「脂肪の吸収を抑える」など言い切り型のキャッチコピーが効果を過大に期待させたり、許可を得ていない効果まで期待させている傾向が見受けられた。

 このため、建議では早急な対応として、トクホの指導要領を改定し、許可を受けた際に確認された効果を超える効果を類推させる表示広告の禁止や、適切な利用方法を認識できるような表示広告とすべきと指導要領に明記するよう求めた。また、トクホを含む健康食品全般の広告・表示対策として、誇大表示を禁じた健康増進法31条の条文にある「著しく事実に相違する表示―」の「著しい」の具体的例示を拡充し広く公開することや、今月から都道府県にも勧告・命令権が移譲されたのに対応し、都道府県への十分な周知を求めた。消費者にも健康食品やトクホ制度に関する周知強化や、事業者啓発の強化も併せて求めた。

 トクホの運用では、検証データの質を保つため、UMIN(臨床試験登録システム)登録の必要性や、製品情報の公開義務化とその内容の拡充、規格基準型の範囲拡大に向けた検討などを求めた。

 一方、早急な対応は求めないが、しかるべき対応などを求めた9項目では、健増法への不実証広告規制導入や、早急な対応策で挙げた同法31条の「著しい」の文言が監視指導を難しくしているとして、削除の検討を求めた。このほか、健康食品の表示広告の監視強化のため、行政手続法や食品表示法の申出制度の活用、トクホの運用面では、許可から年月が経った製品を対象に、試験水準の大幅な変化が起こった際の再審査を検討することや、機能性表示食品によって存在意義がほぼなくなった条件付トクホを今後も存在させるか否かの検討も求めた。

トクホ制度を引き締め

 消費者委員会の建議は、制度発足から20年以上を経たトクホ制度の改善が色濃いものとなった。トクホ同様に機能性表示が可能な機能性表示食品制度が昨年4月に導入され、トクホの存在意義は大きく揺らぐことになっただけに、このタイミングで改めて国の許可制度だという点を引き締めなおす同委の判断は的を射たものといえる。

 特に、トクホの広告表示については、「トクホさえ摂っていれば」又は「多量に摂れば」、健康の維持・増進ができると誤認させるような表示があると、度々同委で問題視されてきた。3月にはトクホの広告では初めて、著しく人を誤認させるとして、消費者庁がトクホメーカーに健康増進法に基づく勧告という行政指導を行った。

 建議では「脂肪の吸収を抑える」といった言い切り型のキャッチコピーが消費者に誤認を与えているとの観点から、許可の際に確認された効果を超える効果を類推させる表示広告を一切禁じるよう求めた。12日の同委会見では、キャッチコピーそのものではなく、それによって消費者が商品の効果を過大に期待するのを防止したいとの趣旨説明があったが、どこまで認められるのかという線引きは難しい。規制を厳しくしすぎればトクホの許可事業者や許可を目指す事業者が萎縮しかねない。今後の消費者庁の判断や業界対応が注目される。

【写真=建議について記者説明する河上正二委員長(中央)、寺本民生専門調査会座長(右)、阿久澤良造委員(12日、東京・千代田区)】

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