原料原産地表示検討 義務化をめぐり攻防(2016.5.12)
加工食品の原料原産地表示の拡大に向けた検討を行っている消費者庁と農林水産省共催の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」(森光康次郎座長・お茶の水女子大学大学院教授)は4月27日に会合を開き、生産者や事業者団体、消費者団体から意見の聞き取りを行った。
原料原産地表示を巡っては、対象拡大や原則的に全ての加工食品に対し義務表示化を訴える消費者団体や国内の生産者団体と、違反した場合に罰則などがかかる義務化には反対で、任意表示で対象品の拡大を求める事業者団体という構図になっている。この日は委員以外からの意見陳述だったが、この構図に変化はない。しかも意見は先鋭化しつつあるように見受けられる。
消費者団体は、アンケート調査などを基に、外国産に対する消費者の不安意識の高さを改めて主張。そのうえで「実行可能性は否定しないが、まずは全ての加工食品に表示を義務付け、実行不可能な場合は例外の部分で考えるべき」と、実行可能性の問題は後回しと言わんばかりで義務化を求めた。また、以前から問題視している義務対象を選定する際の2要件の廃止又は見直しについても改めて求めた。
一方、事業者団体は、義務化した場合のデメリットを主張。国内の生産者団体が義務化に前向きなのが念頭にあるのか、果汁飲料や製粉の団体からは、製品の品質確保や表示ミスを防ぐための原産地固定などにより、生産量や品質が安定しない国産原料は敬遠されるとの見方を伝えた。
事業者団体はさらに、国際整合性の観点でも問題があると主張。義務化している国が韓国と日本しかなく「ローカルルールだ」との指摘や、TPP協定で食品の輸出入が促進されようとするなか、原料原産地表示を義務化した場合、輸入障壁だと訴えられかねないと懸念する意見もあった。
各委員の態度は当初からほぼ固まっているとみられ、これで意見の集約を図っていくのは容易ではない。次回は6月13日を予定し、これまでに出た意見や要望の整理などを行う。