グルタチオン学術研究会を立ち上げ 協和発酵バイオ(2016.5.26)
米国や東南アジアなど海外ではサプリメントとして利用されている「グルタチオン」の生理機能研究をさらに深掘りしようと、協和発酵バイオ㈱が「グルタチオン学術研究会」を立ち上げ、4月28日、研究者や臨床医など約50名を集めて第1回懇談会を都内で開いた(=写真)。今後も定期的に開催し、将来的には海外でも同様の集まりを開いたり、学会に発展させたりすることも視野に入れている。
グルタミン酸、システイン、グリシンといったアミノ酸がペプチド結合した構造を持つグルタチオンが肝臓薬として日本で初めて開発、発売されたのは昭和40年代にまでさかのぼる。現在も、肝機能改善、薬物中毒、白内障などに用いる医療用医薬品として使われており、医薬品としての歴史は非常に長い。
ただ、グルタチオンは「古くて新しい」物質だと協和発酵バイオの森田匡彦研究員は言う。実際、この日の懇談会では「廃用性腸管膜萎縮に対するグルタチオンの予防効果」(講演者=内田博之・城西大学薬学部准教授)、「脳梗塞におけるグルタチオンの動態と脳保護作用」(同=福永浩司・東北大学大学院薬学研究科教授)など最新の基礎研究成果が報告された。
「(生体の恒常性を保つ役割もある)グルタチオンは生命の基幹物質だが、生理活性を持つ機能性素材としても科学的に光るものがある。グルタチオン研究をさらに発展させることで、人々の健康に必ず資する」と森田研究員。しかし一方で、薬剤としての歴史が長いこともあり「近年はグルタチオンに焦点を当てた議論の機会が少なくなっている」のが現状。議論の場をつくる目的からも研究会を発足させたという。
製造販売の歴史長く
同社とグルタチオンの関わりは深い。昭和40年代に酵母培養からの製造技術を確立した後、昭和45年にグルタチオン製剤「アトモラン」を発売(現在終売)するなど医薬品グルタチオンに長年関わっている。また、昭和59年にはグルタチオン含有酵母配合健康食品も発売していた。現在は、特に発酵法によるピュア・グルタチオン(L‐グルタチオン)の製造販売に力を入れている。
機能研究も進めている。特にL‐グルタチオンについて「薬効として既に知られる生理活性以外の健康維持・増進機能を追求することで、サプリメントとしてのポテンシャルをより顕在化させたい」と同社は言う。
ただ、日本では食薬区分との兼ね合いで食品としての販売は現状できない。それでも機能性研究を進める背景には、米国では主に抗酸化やデトックス素材として、東南アジアでは美白素材として需要の高いことがある。今後、L‐シトルリンなどと同様に、スポーツニュートリションとして活用できる可能性もあるという。