15年度の消費者相談は92.7万件 消費者白書(2016.5.26)
政府は24日の閣議で、2016年版消費者白書を決定した。15年度にPIO―NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録された消費生活相談件数は約92.7万件で、14年度の94.6万件を下回ったが引き続き高水準にある。このうち、4月10日までに本登録された約89万件でみると、デジタルコンテンツやネット接続回線など「運輸・通信サービス」が約28万件と、全体の3割を占めた。
販売購入形態別の割合でみると、15年度の相談で最も多かったのは「店舗購入」の28.2%だが、11年度の32.8%からは徐々に減少傾向にある。対照的に「インターネット通販」は26.4%で、11年度の19.8%に比べて増加した。ただ、この中には通常の「インターネット通販」とはいえないアダルト情報サイトやオンラインゲームなどデジタルコンテンツの相談が約7割含まれる。「訪問販売」は9.1%で同1.8ポイント減、「電話勧誘販売」は8.6%で同0.7ポイント増えた。
商品・サービス別に詳細を見ると、「デジタルコンテンツ」の相談が最も多く、80歳代以上を除く各年齢層で1位となった。「健康食品(全般)」「他の健康食品」は20歳代と80歳以上で10位以内に入った。これら健康食品は中学生や高校生など未成年者の相談でも上位に入るなど、若年層の相談が目立つ。
一方、消費生活相談のうち、危害情報は1万177件・危険情報は4270件で、ともに14年度を下回った。危害情報のうち、被害者年齢を65歳以上の高齢者に絞ると、件数が多いものとして、「医療サービス」「歯科治療」健康食品等が上位を占めた。特に健康食品の場合、男性・女性ともに、摂取によって体調を崩したという事例が多いという。
相談1件当たりの平均購入額は、請求額や契約額の「契約購入金額」が平均105万円、実際に支払った「既支払額」は41万円で、ともに減少しつつある。なお、消費生活相談情報などから算出した15年の消費者被害・トラブル額は推計6.1兆円と、前年の6.7兆円より減少した。
消費者を取り巻く社会経済情勢としては、消費者の支出に対する姿勢は慎重な状態が継続すると分析。特に所得に対する不安が根強いという。消費者庁の物価モニター調査によると、消費を減らそうと思う品目のトップは「食料品」で、15年4月以降変わらない。
また、内閣府の「消費者行政の推進に関する世論調査」によると、この1~2年に生じた消費者問題に「関心がある」と回答したのは7割。関心がある分野は食中毒事故などの「食品の安全性」が最も高い65%で、次いで「虚偽・誇大表示」が59%、「悪質商法」が48%で続いた。年代別では50歳代と70歳代で「虚偽・誇大表示」が「食品の安全性」を上回った。「悪質商法」は20歳代で26%だが、50歳代以上は5割を超えた。
一方、昨年11月に消費者庁が実施した消費者意識基本調査によると、消費者として心掛けている行動として、「表示や説明を十分確認し、その内容を理解したうえで商品やサービスを選択する」割合が3年前より11.9ポイント増えた。一方、過去1年間に購入した商品や利用したサービスについて何らかの消費者被害・トラブルを経験したと認識している人は10.9%と、14年度調査を0.3ポイント上回った。
機能性表示食品については「どのようなものか知っていた」が10.5%、「名前を聞いたことはあったが、どのようなものか分からない」が38.7%、「知らなかった」が49.4%だった。
同制度については、残された課題について検討会を開催し、16年秋を目途に報告書を取りまとめるほか、普及啓発用資料の作成等を通じ、制度の理解増進を図っていると紹介した。