“未成年”巡る考え二分 ASCONの評価(2016.6.23)

2面図表修正

 届出番号A1~80までの機能性表示食品の届出情報を独自基準で評価し、先月1日に結果公表していた消費者市民社会をつくる会(ASCON、阿南久代表理事)は今月15日、「照会中」としていた2商品の評価結果と、届出者とのやり取りをホームページで公表した。いずれも評価結果は、評価判定外と事実上みなす「見解不一致」。これにより、同様に評価されたのは計8商品となった。

ASCON評価「ガイド不適合」

 ASCONは見解不一致とした届出について、「一部の企業は多数の企業とは異なった判断企業を持つことが明らかになった」としている。

 だが、日本の民法では「未成年」と規定される18歳以上20歳未満の被験者を含む文献を届け出ていることを理由に、当該文献の除外を求めたり、見解不一致だと結論づけたりするASCONの評価基準には疑問の声も上がる。

 欧米や中国など海外各国では18歳以上を「成人」と定めている場合が多い。そのため、日本以外の国で実施された臨床試験の被験者の中には、18歳以上20歳未満の人が含まれる可能性がある。

 ASCONは小泉直子・兵庫医科大学名誉教授を委員長、に据えたとする「科学者委員会」を昨年10月までに設置し、委員会が届出番号A80までのうち撤回1件を除く計79件の届出情報を評価。うち機能性の科学的根拠について研究レビューを届け出た8件に関し、採用文献に未成年が含まれるため「ガイドライン不適合ではないか」などと指摘した。評価結果を今回追加した2商品についても同じ指摘をしている。

 内閣府令である食事摂取基準では機能性表示食品の対象者について「疾患に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む)及ぶ授乳者を除く)」と規定。そのため届出ガイドラインでも、研究レビューの臨床試験に係る「対象者の考え方」については原則的にその規程に則るよう求めている。

 これを根拠にASCONは、「未成年」が被験者に含まれる文献を採用した研究レビューは「届出から除外すべきではないか」などと届出者に見解をただしたようだ。

 それに対して明確に反論したのは4事業者。このうち「被験者は20歳以上であることを確認」していると説明した1事業者を除く3事業者についてASCONは、「民法上の規程による未成年を含む臨床論文は除外すべき」などと主張して「見解不一致」だと結論。成人の線引きを巡る「世界のすう勢は18歳以上」だとする反論もあったが、「機能性表示食品は日本の制度」だと一蹴した。

 3事業者の中には厚生労働省が定めた最新の「日本人の食事摂取基準」を引き合いに出して強く反論した先もある。同基準では栄養素摂取の指標について年齢区分を設けており、18歳以上を「成人」としているためだ。

 この事業者は「体が大人であるという趣旨で(18歳以上を)成人とみなすことは栄養学における共通認識であると考えています」と言う。この意見に同調する業界関係者の声は複数聞かれるが、この主張に対してもASCONはやはり民法を盾に「見解不一致」だと退けた。

 他方で、未成年を巡るASCONの指摘に最終的に応じて当該文献を除外したり、18歳、19歳の被験者を除いて再解析したりの上で、届出の修正を講じる方針を示したのも4事業者。指摘への対応は真っ二つに割れた。

 届出表示に一切影響が生じないために選択できた対応だったとも考えられるが、「多大な労力をかけた」と業界関係者は再解析の苦労を案じる。指摘された事業者の中には「前回申し上げた理由からガイドライン不適合ではないと考えておりますが、貴会のご指摘を真摯に受け止め」新たに解析を実施したなどと忸怩たる思いを覗かせる先もあった。

民法が根拠も「科学的でない」

 一方、日本の民法を根拠に「ガイドライン不適格」を主張するASCONに対しては、今回指摘された事業者以外からも、「合理的な根拠をしっかり示すことが出来れば18歳、19歳が含まれていても問題はないはずだ」と反発する声も出ている。

 実際、A80以降の届出の中には、研究レビューの採用文献の一部に18歳以上20歳未満の被験者が含まれることを明らかにした上で受理されているものもある。この届出では、18歳以上を成人と見なせる根拠を医学、栄養学などの観点から詳しく説明。18歳以上の健常成人であれば経口摂取の外挿性はほとんど変わらないとする見解を科学的に示している。

 ASCONの「科学者委員会」が策定した独自の届出評価基準は、「科学的根拠の程度」をA~Cの3段階で示すものであり、その程度は、「根拠とする論文がどの程度の数があるのかを中心に」判断すると言う。例えば、届け出られた論文が5報以上あるなどすれば、「有効性について十分な根拠がある」を意味する「A評価」になるなどと説明されている。そのため、「サイエンティフィックとはあまり言えない」。業界内外からこうした声が聞こえる。

 未成年を巡る指摘についても「そこまで目くじら立てることだろうか。日本でも成人年齢を18歳に引き下げるべきかどうかが以前から議論されている」。そのうえで、「評価するならばむしろ、限定的な被験者で示された機能性を、さも全体に効果があるかのように表示している方を問題視すべき」だとして、評価すべきポイントが違うと機能性表示食品を届け出ている事業者は指摘する。

 海外各国の食品機能性表示制度に詳しい業界関係者は言う。「海外で行われる臨床試験では18歳、19歳が対象となっている可能性も高い。未成年に関する問題は、制度全体を見直す次の検討会で論点の一つにすべきだと思う」。ASCONから指摘を受けた複数の事業者は、現行の届出ガイドラインについて未成年の定義が明確にされていないと指摘している。

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