研究レビュー検証事業で報告書 消費者庁が公表(2016.7.7)
消費者庁は7日、「届け出られた研究レビューの質に関する検証事業」の報告書をウェブサイトで公開した。公開されたのは報告書全文はじめダイジェスト版の和文および英文の3文書。報告書には付録として「適正な研究レビューの記述例」が付けられた。
機能性表示食品制度の適正運用に向けた課題抽出や、研究レビューの質を高める方策などを検討するために行われたもの。評価対象は昨年10月31日までに公表された122品目のうち、最終商品の臨床試験による届出や撤回、重複を除いた51編の研究レビュー。報告書では研究レビュー個別の評価結果は明らかにしていない。
事業は消費者庁の委託を受け、みずほ情報総研㈱が識者によるワーキンググループを設置して実施。報告書もWGが取りまとめた。
WGでは、研究レビューで準拠が求められている「PRISMA声明チェックリスト」について「機能性表示食品のための拡張版」(計45項目)を作成し、これに基づき個々の届出レビューの質を評価。届出レビューごとに不備率を見たところ、平均値±標準偏差は36.4%±17.2%だったという。
また、評価では文献検索の適正性の検証なども実施。このうち「検索式の検証」に関する評価結果は平均値3.8点(5点満点)となった。評価のベースラインに設定した3点を上回っているが、「個々の届出SR(レビュー)の評価点にはばらつきがみられた」
報告書の公開で、WGの委員長は上岡洋晴・東京農業大学教授、副委員長は折笠秀樹・富山大学教授がそれぞれ務めたことが分かった。同2名は、届け出られた研究レビューをさらにシステマティクレビューすることで、届出レビューが正しい方法論に基づいて実施されたかどうかなどを検証する民間研究「FFC‐SR2」の主要研究者。
採用文献、病者含む可能性指摘
7日に消費者庁が公表した機能性表示食品制度に関する「届け出られた研究レビューの質に関する検証事業」報告書によれば、採用された文献の対象者(被験者)の中に疾病罹患者が含まれているとも解釈できる文献を含む研究レビューが、評価対象51編中6編存在したという。軽症者しか含まれていないものも4編あった。
ほかに、軽症者と疾病に罹患していない者の両方が含まれている一方で疾病に罹患していない者のデータのみを対象とした研究レビューが別途実施されていない、あるいは実施した結果が詳細に明記されていない研究レビューも10編存在したという。
この結果を受け、評価を行ったワーキンググループは報告書の中で、「科学的前提として、参加者の主要アウトカムや副次アウトカムの初期値が著しく高い、または低いものを含んでいる場合には、疾病罹患者データが存在していると考え、その研究は届出SR(レビュー)に使用すべきではない」と指摘している。
報告書、「付録」の位置づけは?
公表された「届け出られた研究レビューの質に関する検証事業」報告書の付録「適正な研究レビューの記述例」は、評価を実施したWGが評価ツールとして独自に開発した「PRISMA声明チェックリスト 機能性表示食品の拡張版」に基づき作成された。これについてWGでは「届出資料作成時の参考としていただきたい」としている。
この付録を巡っては、5月26日にあった「機能性関与成分検討会」第5会合の中で、消費者庁食品表示企画課の石丸課長補佐が「届出をする際に質の高い届出資料になるような形で、きちっと周知を図っていきたいと考えている」と発言していた。このため、そう明記されているわけではないが、届出ガイドラインを補強する資料として今後扱われる可能性も考えられそうだ。
一方、WGの委員長を務めた東農大の上岡教授は、先月27日に開催された日本健康食品規格協会(JIHFS)主催の講演会に登壇した際、この付録について「『指南書』のようなものだと思う」などと述べた。上岡教授はこの講演の際、同検証事業に関与したことを秘匿していた。