情報提供の充実が必要 日健栄協が安全性セミナー(2016.7.7)
日本健康・栄養食品協会は4日、健康食品の安全性に関するセミナーを東京・新宿区の新宿区牛込箪笥区民ホールで開催した。食品安全委員会の鋤柄卓夫評価第二課長による基調講演のほか、有識者3名による意見交換などが行われた。
鋤柄氏は昨年12月に食安委が取りまとめた「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」について解説。メッセージは全部で19項目あり、科学的知見に基づき健康食品の摂取上の留意点をまとめたもの。鋤柄氏は健康食品を摂取するかどうかは消費者の自己選択だが、健康食品に対し医薬品的な効果を期待するなど誤認があることや、健康食品が健康な成人向けであることを知らない消費者は多いと語り、摂取には注意が必要だと語った。また、健康食品のメーカーに対しては、この消費者の自己選択や、有害事象・有効性を自己評価するのに必要な情報を提供するよう求めた。
一方、意見交換では機能性表示食品の安全性や、現在、消費者庁の検討会で議論されている、ビタミンなどの栄養成分と関与成分が不明確な食品の取扱いが話題になった。健康食品産業協議会の関口洋一氏は、機能性のある健康食品は機能性表示食品に移れる土俵が必要だと語り、対象成分の拡大の方向に検討会の議論が進むことに期待感を示した。また、そのために業界がやらなければならない方策として、機能性関与成分の分析法を第三者に開示し、第三者が検証ができるようにするほか、一定の品質担保のため、GMP(適正製造規範)による管理が必要だと述べた。特に関与成分が不明確なものについては、原料からGMP管理が必要であり、ガイドラインに書き込んでも構わないと述べ、GMP義務化を容認する考えを伝えた。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の蒲生恵美氏は、消費者にアドバイスできる専門家に期待を示したほか、消費者への情報提供、消費者啓発の必要性を説いた。一方、消費者庁の検討会でビタミン類の過剰摂取が話題になることに触れ、個人的には健康食品で使われており、機能性表示食品になったからといって摂取量が増えるとは思わないと指摘。ただ、同制度では論文1報でも可能なことから「消費者が果たしてエビデンスのレベルまで考えられるのか心配」と、誤認という観点では同制度の活用が良いか疑問だと語った。
毎日新聞の小島正美氏は機能性表示食品に関する消費者団体などの疑義情報について、消費者庁は事業者に確認し答えを公表すべきと語った。
下田氏を理事長に再任
日健栄協は6月23日、臨時理事会を開いて下田智久理事長(代表理事)の再任など新執行体制を決めた。前日の同月22日の定時評議員会で理事の改選が行われ、新たに24名が選任されたのを受けたもので、理事の任期は2年間。
理事会では山口喜久二氏(東北福祉大学特任教授、ジャパンローヤルゼリー取締役相談役最高顧問)、鈴木信二氏(日本アドバタイザーズ協会専務理事)、山本徹氏(日本穀物検定協会顧問)、中村靖氏(創健社代表取締役社長)、平野宏一氏(ヤクルト本社執行役員)の5名を業務執行理事に選出。うち山口氏と鈴木氏の両氏は副理事長に就いた。
なお、新任理事には阿南久氏(消費者市民社会をつくる会)、板波英一郎氏(クロレラ工業取締役副社長)、大野泰雄氏(木原記念横浜生命科学振興財団理事長)、清水誠氏(東京大学名誉教授)、鈴木康夫氏(宮城大学地域連携センター副センター長)、武中大輔氏(甲陽ケミカル専務取締役)、山田英生氏(山田養蜂場代表取締役)を選出した。
【写真=講師によるパネルディスカッションの様子(7月4日、東京・新宿区)】