栄養成分、決着つかず 座長「引き続き議論」(2016.7.7)

検討会

 機能性表示食品制度の機能性関与成分の拡大などについて検討している、消費者庁の「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」(寺本民生座長・帝京大学臨床研究センター長)は6月30日、食事摂取基準などに基準が設定されているビタミンやミネラルなどの栄養成分の取扱いについて議論した。栄養成分の取扱いについての本格的な議論は今回で2度目。議論は「糖類・糖質」「タンパク質・脂質」「ビタミン・ミネラル」の3つに分けて行われた。

 なかでも最も議論されたのは、市場の規模や関心が高い「ビタミン・ミネラル」。

 同制度への取り込みを求める事業者代表の関口洋一委員は、4月の検討会でビタミンDやB群、葉酸、ミネラルのカルシウムや亜鉛など具体的成分を挙げたが、この日はビタミンDを例に耐用上限量厳守の考えや過剰摂取回避に向け、注意喚起や消費者への安全性情報の啓発などの取組みを業界が行うことを提案。さらに、ビタミンやミネラルに限らず、同検討会で再三指摘を受けた、機能性関与成分の分析方法について、情報漏洩の保証を条件に第三者の分析機関などへの開示を認める考えも示した。

 ただ、「国民のリテラシーが上がらず、安全性にも問題があるのならやはり認められない」(森田満樹委員)、「栄養機能食品でさえ正しく理解されていない。制度の問題点を洗い出してから次に進むのが順序」(梅垣敬三委員)と、消費者が誤認する恐れがあることを理由に難色を示す意見があったほか、「栄養機能食品以外の機能があれば、それは食事摂取基準に上がってくる」(赤松利恵委員)と、現時点で制度へ取り込みことには慎重な意見が相次いだ。

 事業者の委員からは、ビタミン、ミネラルは医薬品のほか、いわゆる健康食品など8つのカテゴリーで使われており、「機能性表示食品だけ使われないのは違和感がある。良い悪いでなく、注意表示や配合量を工夫し、使い方を考えるべき」(宮島和美委員)との指摘もあった。

 寺本座長は「最初から否定しているわけではない。3次機能を出そうとしたときに、安全性をどう担保できるなら使えるか議論している」と発言したが、最終的には「この問題については十分まとめきれていない」として、引き続き議論すると引き取った。

 「糖類・糖質」についても、関口委員より、主に栄養源とされる成分を除く成分を取り入れるよう提案があり、例としてL‐アラビノースやパラチノース、イソマルトオリゴ糖などのオリゴ糖類、キシリトールやマルチトールなどの糖アルコールを挙げた。安全性については、ガイドラインに則り、特定保健用食品(トクホ)などの安全性審査情報の収集を含めた安全性評価を確実に行うこと、容器包装等に「摂りすぎによりお腹がゆるくなる」といった注意喚起表示を徹底する考えを伝えた。

 これについては、4月の検討会でも意見が出ていた、規格基準型の特定保健用食品(トクホ)にある成分を対象とすることに一定の理解を示す委員がいたほか、「野菜、イモ類などにも入っており、量と機能のバランスが取れるなら認めていく」(山本〈前田〉万里委員)、「合成物は品質管理の問題がある。ぎりぎり培養法などで作られたものなどを対象に議論を」(合田幸広委員)など、一定程度認める方向で議論が進んだ。

 一方、「タンパク質・脂質」については「脂質はメカニズムが完全に解明されていないものが多い。ルールを作るなら(対象成分になっているEPAのように)世界常識としてこういうように効くからというものを組み込まないと」(合田委員)と、課題点は出たが、具体的な方向性が出るまでには至らなかった。

 次回第7回会合は8月4日午前中に開催される予定。議題は、機能性関与成分が明確でないものの取り扱い(安全性の確保、機能性の表示)となる見通し。

栄養機能食との「W表示」提案 合田委員「規格基準の範囲内で」

 6月30日にあった機能性関与成分検討会では、ビタミン・ミネラルの取扱いを巡り、合田委員から、栄養機能食品とのダブル表示の可能性が提案された。

 栄養機能食品として規格基準がある栄養素の上下限値の範囲で機能性表示食品の対象にするという奇策ともいえる提案で、同氏は、栄養機能食品制度策定時に上限値など安全性の議論がされていると述べたほか、「機能性表示食品にすれば被害情報が集まる。その部分は消費者にはメリット」と有効性を指摘。さらに「耐用上限量のあるものは外し、まずは耐用上限量のないものから順次進めていく」といった考えも併せて示した。

 もっとも、突然の提案であり、この日だけで議論がし尽くされたとはいえず、今後、この提案がどうなるかは見通せない。

 また、この考えだと栄養機能食品の上限値の範囲に限定されるうえ、事業者団体の委員が提案する複数のビタミンを組合わせた相乗的な機能について解決できない可能性がある。

 この提案を巡っては別のアカデミア委員から「面白い意見ではあるが、消費者に本当にメリットなのか慎重に考える必要がある」(赤松利恵委員)と疑問の声も上がる。また業界関係者からは「機能性関与成分としてどの様に扱い、栄養機能食品とどう棲み分けるかという本質的な問題から目をそらす事は出来ない」(㈱グロバールニュートリショングループ武田猛代表)と、最大課題の一つである栄養機能食品制度との整合性をどう図るかの解決にはならないという意見も聞かれる。

 実際、この提案では機能性表示の範囲は栄養機能食品で規定された表示に限定されるといえ、業界が要望する第三次機能の表示には結びつかないと考えられる。

 ただ、これにより市場に流通するいわゆる健康食品を機能性表示食品にしていくことが出来れば、情報開示の面で消費者メリットは小さくない。また、たとえ奇策だとしても、安全性を確保した上での「対象拡大」と見なすことも不可能とはいえず、多様な関係者の面目を保つことも出来る。消費者庁の対応が注目されそうだ。

【写真=栄養成分の取扱いを議論した第6回検討会の様子(6月30日、東京・千代田区)】

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