LV創造産業の実態調査 健食業界の取組を参考に(2016.7.21)
健康や美容など、公的医療保険の枠外にある、生活の価値(ライフバリュー〈LV〉)を創造する産業(以下、LV創造産業)の実態について調査した、厚生労働省の研究報告書「生活の価値(ライフバリュー)の向上を目的とした新たな産業促進のための調査研究」(研究代表者:益山光一氏・東京薬科大学薬学部)がこのほど公表された。
報告書では、これらLV創造産業は10兆円規模ともいわれ、「国民が多様な価値を求めるようになった今日、人々の生活の価値を向上させる基幹産業として、さらなる発展が期待できる」が、その実態は明らかにはなっていない。一方で、「経済財政運営と改革の基本方針2015」では、社会保障分野の改革に当たり「インセンティブ改革による多様な主体の行動変化による効率化及び公的サービスの産業化について、順次着手する」としており、LV創造産業の促進は現政権の方針に合致し喫緊の課題となっているとした。
研究は、社会保障改革とも関係が深いと考えられる健康と美容に絞って実施。具体的には、健康食品、健康機器、遺伝子ビジネス、フィットネス産業、スパ・サービス産業、美容・整形(脱毛等を含む)など「公的サービス外の周辺産業」を対象に業界の活動状況や規模、課題を調査した。
このうち、健康食品は、国の保健機能食品制度があるほか、厚生労働省の検討を踏まえて設置された、健康食品認証制度協議会が原材料や製造工程管理(GMP)の安全性確保に向けた認証機関の監督指導を行っていると紹介。さらに、業界団体などのGMP認証や、消費者に健康食品の情報を提供するアドバイザリー・スタッフ養成の取組みも紹介した。業界の課題では、機能性表示食品の対象拡大に関する検討が進められていることや、食品の用途特許が可能となる一方で、消費者に過度な期待を抱かせないように正しい情報提供を実施していくことも必要であるとした。
報告書では、LV創造産業はこれまで、品質の確保、資格制度等を各業界団体等で実施してきているが、同じ業界内でも異なる評価基準やシステムとなっていることも少なくない。今後は、その産業分野の科学のレベルと倫理的・法的・社会的な課題との調和を踏まえ、必要に応じて業界内での統一等に向けた対応や、最新の情報やエビデンスに基づいて実施することが、産業促進の面からも必要であると考察。例として健康食品業界を取り上げ、健康食品認証制度協議会が指定や監督を行うシステムや、エビデンスの集積等は、機能性表示食品のように販売者責任で収集や評価を行うような対応が参考になると考えられるとした。