学術団体が届出撤回要請 八幡物産「ブルーベリー」に(2016.7.21)


 通信販売の八幡物産㈱(鳥取県米子市)が販売している機能性表示食品「北の国から届いたブルーベリー」について、日本アントシアニン研究会(会長=矢澤一良・早稲田大学研究院教授)が同社に届出撤回を申し入れていることが、12日までに分かった。届出表示などに疑義があるとしている。同社は「問題はない」として取り下げない構えだが、研究会では「届出が撤回されるよう、情報発信と各所への働きかけを続ける」と言う。

 研究会が申し入れの概要と経緯を明らかにする文書をホームページに掲載したことで明るみになった。掲載は6日付。同品の届出研究レビューの採用文献に用いられたビルベリーエキスと、実際に同品に配合されているそれの「同等性が根拠づけられていない」ほか、機能性表示の内容について「採択した文献の結論と矛盾している」と疑義を呈している。

 同品はビルベリー由来アントシアニンを機能性関与成分とするサプリ。表示の内容は「アントシアニンには、パソコン作業、事務作業など目をよく使うことによる、目の疲労感、ピント調節機能の低下を緩和することにより、目の調子を整える機能があることが報告されています」

 一方、八幡物産は、「(届出に)問題はないと考えているため、取り下げはしない」と取材に答え、研究会の主張について、「その内容に正当性が見出せず、納得できるものではない」などとする見解を表明している。
 他方、研究会は、同社の見解が報道されたのに絡み13日付で新たな文書を公開。文書では指摘内容を具体的に開示しており、同等性については、文献で使われたビルベリーエキスと同品に配合されている同エキスは「異なるメーカーのもの」だとしたうえで、同品の届出は「生理活性の再現性を担保するほど、両ビルベリーエキスの同等性が確保されていると主張するには無理がある」

 届出表示については、ビルベリー由来のアントシアニンそれ自体には「目の調子を整える機能のあることを報告する文献は存在しない」。さらに「目の疲労感を緩和する」などと表示していることについては、「(採用文献では)プラセボ群と比較したRCTにおいて、眼精疲労自覚症状について有意に改善されるという推論が否定されている」などとして、届出表示は科学的根拠に裏付けられたものではないとの見解を示している。

 健康食品素材に関する学術団体が、機能性表示食品の届出に疑義を申し入れるのは初と見られる。「(アントシアニンに関する)専門家の団体として、制度の趣旨に鑑み、消費者の合理的かつ自主的な選択を誤らせる恐れがある機能性表示が付されていることを放置できないと考え、申し入れを行った」と言う。

 一方、八幡物産は研究会の13日付文書について、研究会と同社の間で届出ガイドラインに対する「解釈の相違が根本にある」と弊紙取材にコメント。同社の解釈によれば、同等性についてはガイドに則った考察を行い届け出ているため「問題ない」という。また、採用文献を巡っても「統計解析の結果における解釈の相違」があるとし、当該文献は「眼精疲労を改善するという点を肯定する」ものだと解釈しているなどと主張。研究会とはおよそ異なる考え方を示している。

反発 一時は仮処分申請

 研究会と同社の間で届出情報を巡るやり取りが始まったのは今年1月。研究会は届出に対する疑義と、撤回を申し入れる文書を同社に送付。その後同社は3月1日から同品の販売を始めた。

 一方で研究会は、「指摘に対する実質的な中身のある回答」がないまま販売が始められたとして、やり取りを公開する考えを示しつつ更なる回答を同社に要請。これに対して同社は、やり取りの公開を差し止める仮処分を東京地裁に申請。研究会はこれに反論し、5月以降に3回の審尋が行われた。

 しかし、同社は地裁が判断を下す前に仮処分を取り下げた。

 研究会によると、審尋およびそれと並行する形で同社との間で同等性や表示の科学的根拠を巡るやり取りが行われており、「八幡物産側はこれに有効な反論をすることに失敗したと考えている」。一方で同社は、「公表することを差し止める仮処分の取り下げを行っただけ」だとし、当初の目的だった「当事者間の協議による『穏当な解決』が不可能であると考えるに至ったに過ぎない」などと反論する。

 研究会は今月4日、改めて同社に対して届出を撤回するよう申し入れた。一方、同社は「弁護士と協議を進めている」と取材に答えており、訴訟を提起する可能性も視野にあることを示唆している。

 一方、一連のやり取りの中で、同社が研究会の指摘に対し、科学的根拠に基づき、具体的にどう反論してきたのかは明らかにされていない。届出情報のみで十分だと判断している可能性もあるが、指摘を補う科学的根拠や考察を同社は用意しているからこそ「問題はない」と強く主張しているとも考えられる。それを示す以外に事態の収拾は困難といえそうだ。

 なお、同等性について同品の届出では「本品で用いるビルベリーエキスの基原は文献中で使用されているものと同等の北欧産Vaccinium myrtillus L の果実部位であり、そのエキスにはビルベリー特有の15種かつ36%のアントシアニンを含んでいることから原料は同等と考えられる」としている。

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