消費者委員会 制度運用状況を問題視 機能性表示食 検証事業結果に懸念(2016.9.22)

特別用途第3回検討会

 消費者委員会(河上正二委員長)は20日に開いた本会議で、機能性表示食品制度の施行から1年半が経過したのを機に、制度の運用状況について消費者庁食品表示企画課長らからヒアリングを行った。委員会は、消費者庁が昨年度実施した検証事業の結果やそれに対する同課の対応を問題視しており、厳しい意見が相次いだ。業界にも対応が求められそうだ。

 河上委員長は、「この制度が上手くいくようにというのが我々の願いだ」と語った。

 一方、「委員会が懸念していたいくつかの条件に関し、事後チェック機能が上手く働いているのかどうか疑問を禁じ得ない」と指摘、「体制整備を含めて速やかに(制度の)見直しが行わることを希望したい」と同庁に要望した。「せっかく導入したのに制度そのものの信頼が崩れれば意味がない」とも述べた。

 消費者庁による検証事業では、結果として、届け出られた研究レビューの一部に不備が指摘されていたほか、買い上げ調査で機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていたり、逆に、過剰に含まれるものがあったりする可能性が発覚していた。

 河上委員長はこうした結果について、「表示値を下回っているのであれば食品表示法に違反している」と厳しく指摘。また、届出に不備のある可能性があるにもかかわらず「届出番号がすでに与えられ、市場にモノがあるというのは憂慮すべき事態だ」と述べ、法的措置を講じる必要性を求める考えを示唆しつつ、制度の運用状況に強い懸念を示した。

 また、弁護士の池本誠司委員長代理は、「非常にもどかしい」として、届出情報が不十分である可能性のある届出の件数や、それに対して消費者庁は現在どう対応しているのかなどといった具体的な情報を開示するよう求めた。

 これに対して消費者庁食品表示企画課の赤﨑暢彦課長は、「問題意識は共有している」と繰り返し回答。「法令やガイドラインで定められた要件をクリアしていないとなれば、それは適正な届出とはならない」との認識を示した。ただ、同庁としては「きちんと事実関係を確認」する必要があることも再三にわたって説明、「いろいろなやり取りを(届出者との間で)行っているところ。具体的な対応が必要なものについては現行の法令に則って対応する」として、現時点では具体的な対応状況を明かせないことに理解を求めた。

 消費者委員会は制度施行前の2014年、内閣総理大臣からの諮問を受け、機能性表示食品制度の実質部分を規定する内閣府令の食品表示基準について審議していた。

 ただ、「制度をどのように運用するかの詳細がまったく盛り込まれていない。後日消費者庁が作成するガイドライン等によって制度の運用方法が決定されるという極めて不透明な中での審議」(河上委員長)だったため、同年12月に出した答申では、食品表示基準を了承する「前提条件」として9つの附帯意見を付け、それに対応したうえでの制度運用を求めていた。

法的脆弱性 再び俎上に
 この日のヒアリングは、制度施行から1年半が経ち、「そろそろ附帯意見への対応状況や制度の運用状況を検証するために必要なデータが揃った」(河上委員長)として行った。

 食品表示基準を巡る14年の審議では、委員から機能性表示食品制度に対して多くの懸念が示されていた。とりわけ問題視されたのが、「法的基盤の脆弱性」だった。「例えばきちんとした証拠もなく届出をして、後からそれが間違いだったことがわかったときに、それを取り消したり是正したりということを、消費者庁としてできるだけの法的な裏打ちがきちんとなされているかどうか」(同)という強い疑問が委員会にはあった。

 この日のヒアリングでも複数の委員が法的基盤の脆弱性について触れ、「実は(制度の)運用に絡んでいるのではないか懸念している」などと述べ、それによって同庁が是正指導などの内容を公しづらくなっている可能性を指摘。「問題が出てきたときに、法的脆弱性があると、国民にとって分かりやすい形での行政対応がしにくくなってしまう」との懸念を改めて示した。

 これに対して赤﨑課長は「食品表示法が現時点でただちに根拠として不十分かどうかは、いま実際に運用していることもあり、現実にそれが原因で制度の適正さが担保されていないとまでは考えていない」と否定。ただ、「本当にこれでいいのかどうか」については問題意識を持ちながら引き続き検討したいと述べた。

 委員会は、9つの附帯意見の中で、消費者庁が行政処分を行う権限など「法的基盤について実施後すみやかに補強・整備すること」も要求していた。この日の本会議を傍聴した業界関係者は、委員会がヒアリングを行った狙いについて、法的基盤の整備なども含めた「制度の見直しを早く行ってほしいとの思いだろう」と推測する。

【写真=20日にあった本会議の様子(9月20日、消費者庁)】


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