トクホ 許可取消し処分で波紋 関与成分量の全品調査指示 消費者庁(2016.10.6)


 消費者庁は9月23日夜、健康食品通販大手のキューサイ㈱のグループ会社、日本サプリメント㈱(大阪市北区、増田毅社長)が販売していた特定保健用食品(トクホ)の6商品について、健康増進法に基づき、許可の取り消し処分を行い、発表した。同社の自主検査で関与成分量が規格値を満たしていない疑いや、関与成分がそもそも含まれていなかった事実が判明したのを受け、トクホの要件を満たさないと判断。1991年9月のトクホ制度施行以降、許可取り消しは初の事態とみられ、波紋が大きく広がっている。

調査結果「1カ月以内に」
 日本サプリメントによると、関与成分量が規格値を満たさない疑義が「外部」の指摘で発覚したのは2014年2月と2年以上も前だった。同社は9月15日、消費者庁に関与成分に関する自主検査結果と販売を取り止める考えを報告。その後17日には、許可取り消し処分を受けた6商品を含む8商品のトクホの終売を同社のホームページで公表した。許可の取り扱いについては同庁の指導に従うと伝えていた。

 2年以上報告のなかった事態も重く見た消費者庁の岡村和美長官は同27日、業界団体の日本健康・栄養食品協会理事長に対し「長官通知」を発出。再発防止のため、全てのトクホについて関与成分が適切に含まれているかを自主的に調査し、1カ月後の10月26日までに、同庁に報告するよう要求した。適切でないことが発覚した場合には即、同庁に報告するようにも求めている。

 また、同30日にも日健栄協理事長に対して長官通知を出した。「消費者からの信頼を取り戻すため」として、トクホについて業界の自主的な品質管理を徹底するよう強く要請した。

 同庁は今後、日健栄協を通じたトクホ取得企業各社による関与成分量の自主調査結果を受け、同庁として買い上げ調査を行う方針を固めている。17年度予算での実施を予定していた、トクホなど保健機能食品の買い上げ調査の一部を前倒しで行う考えだ。

 岡村長官は9月28日に記者会見を開き、関与成分量に関する業界の自主調査結果について、「いろいろな不適切状態があると思われる」などと憶測を語り、不信感を露わにした。そのうえで、今後の買い上げ調査について、「緊急度の高いものからやりたい」などと述べ、事態の是正を徹底的に図る考えを示した。

品質管理の徹底も要請
 トクホの表示許可取得商品は現在1200品目余り。取得企業数としては200社超とみられる。これら全てが関与成分量の自主調査の対象となり、同庁はこの調査で14年4月14日以降実施の「最新の分析結果」のほか「最新の表示見本」を提出するよう要求。また、相当数が存在するとみられる現在販売されていない商品については、再許可申請を今後予定しているなど理由がある場合を除き、速やかに失効届を提出するようにも求めた。

 この調査で同庁は、関与成分量の分析結果について、医薬基盤・健康・栄養研究所(旧国立健康・栄養研究所)、あるいは登録試験機関が実施したものを提出するのが「望ましい」ものの、実施していない場合は自社分析でも「差し支えない」としている。ただ、28日の長官会見に同席した同庁食品表示企画課の担当官は、「自社分析結果を出してくるところがあれば、そちらを優先的に買い上げの対象にするなど、チェックを厳しめにしたい」と述べ、第三者機関による分析結果に重きを置く方針を示した。

 一方、許可取得後にトクホ中の関与成分量の分析試験を登録試験機関で定期的に行う必要がある旨の規定は特になく、自社分析を行っている場合が多いのが実情だとみられる。また、自主調査結果は日健栄協が取りまとめて同庁に提出する。そのため、実質的な調査期間は20日間前後に過ぎず、「今から分析を頼んでも間に合わないだろう」と業界団体関係者は話す。

長官、許可更新制に言及
 岡村長官は28日の会見で、今回の問題が発生した背景について、「制度として、定期的な更新制を採用していないこともあると思われる」と述べ、事業者負担軽減の観点から97年に廃止された更新制に言及した。「今は制度上、(表示許可後は)企業の自主性を尊重し、良識に頼っているところがある」とも述べ、今回の事態を受け、更新制度を復活させる必要があるとの考えを示唆した。

Clip to Evernote

ページトップ