機能性表示食品巡り討論 川口氏、森下氏(2016.10.6)
消費者庁次長の川口康裕氏と、規制改革推進会議委員で大阪大学大学院教授の森下竜一氏が9月27日、機能性表示食品制度について討論した。川口氏は「表示にどのような意味があるのか消費者に理解してもらわないと意味がない」としたうえで、同庁として消費者リテラシーの向上に努力すると強調。森下氏は「民間企業に必要以上の負担を掛けないことが前提の制度」だとし、スピード感を重視するよう川口氏に求めた。
両氏は、9月27日に都内で開催された「機能性表示食品、全員集合祭!」(日本通信販売協会、日本健康・栄養食品協会共催)で企画された討論会の一つに登壇。前内閣官房参与の大谷泰夫氏のほかコーディネーター役の通販協理事・宮島和美氏も交えた討論を行った。「全員集合祭」には業界関係者ら約300名が参加した。
川口氏は、機能性表示食品の登場によって、特定保健用食品(トクホ)など既存の保健機能食品制度が混乱しているなどの指摘が消費者団体などから出ていることについて、「我々としてはそれぞれの制度の違いを丁寧に説明し、消費者に分かっていただく」と反論したうえで「医薬品との飲み合わせの問題や、過剰摂取はいけないなどいうことも含め、消費者のリテラシー向上を図っていきたい」と述べた。
また、機能性表示食品を社会に普及させたい考えも示した。販売者への連絡先を商品パッケージに記載するよう義務付けている機能性表示食品は「食品の中でもとりわけ優しい制度」などと評したほか、機能性表示食品は「様々なハードルを越えて消費者庁に届け出られている」として届出を巡る事業者の努力に理解を示したうえで、そのことを今後、「いろいろな機会に消費者の方にお伝えしていきたい」と語った。
さらに、遅れがちな届出書類の確認についても触れ、「確認の迅速化が私どもの課題として感じている」と述べ、届出データベースの運用開始などを通じて対策に取り組んでいるとした。ただ、「各社ごとに出す前に努力していただきたい」として、届出書類様式間に論理的矛盾がないか、記載内容に齟齬がないかなどを厳重にチェックするよう事業者に強く要望。一つの届出に不備があれば、「全体の確認待ちの列」がより長くなるとも指摘した。
一方、森下氏は、科学的根拠に関する情報が全面的に公開される機能性表示食品は「従来の健康食品よりも一段上にある、より透明性の高いものだ」と医師の立場から評価。日本医師会の見方についても触れ、「科学的なものに関しては認めていこうという方向に変わってきていると思う」と述べた。
他方で、規制改革会議推進室委員の立場からは、「この制度は(前身組織の)規制改革会議が生み出した制度であり、重点的にフォローアップしていきたい」とし、引き続き密接に関与していく方針を示した。また、推進会議内に新たに設置された行政手続きの簡素化などを検討する「行政手続部会」を紹介し、「健康食品に関する広告規制のあり方も、行政手続きの一環として見直す」との考えを示した。
また、この制度の課題として、「認知度の向上」および「数の増加」を挙げた。トクホは「認可が上手くいかず、時間が掛かった」ことが「制度として失速」した理由の一つだと語った。また、大詰めを迎えている消費者庁「機能性関与成分検討会」については同庁に対し、「フレキシブルな制度としてつくっていただければ」と要望。「あまり硬直的な議論をするのは、本来の(機能性表示食品制度の)主旨に合わないと思う」と釘を指した。
【写真=左:川口康裕消費者庁次長、右:森下竜一大阪大学大学院教授】