エルゴチオネイン 脳機能対応で拡販へ 学習機能向上に作用 (2016.10.6)
抗酸化物質のエルゴチオネインを含有する健康食品原料、タモギ茸抽出物「アミノチオネイン」(登録商標)を供給する㈱エル・エスコーポレーションは、同素材を今後、ブレイン・フードとして売り込む方針を決めた。金沢大学との共同研究で、学習機能向上機能を動物試験で確認するとともに、その作用メカニズムの一部を解明できたのに伴う決定。今後、機能性表示食品制度への対応も視野に入れた臨床試験を実施するなどしながら、脳機能対応素材として配合提案を進めていく。
同社はアミノチオネインの脳機能に及ぼす働きを調べる研究を、金沢大学の加藤将夫教授(薬学系分子薬物治療学)と共同で進めている。加藤教授は以前から、うつ症状軽減作用に注目したエルゴチオネインの研究を行っており、同成分は体内のトランスポーター(OCTN1)を介して脳神経幹細胞に取り込まれ、抗酸化作用とは別の機序で神経分化を促進することを明らかにしていた。
共同研究の成果は先ごろ開催された第63回日本食品化学工学会と、第11回遺伝子栄養学研究会学術集会でそれぞれ発表した。発表によるとマウス試験の結果、タモギ茸由来のエルゴチオネインを継続摂取すると、記憶学習能が大きく高まる可能性のあることが分かったという。
また、作用メカニズムについては、エルゴチオネインが消化吸収後に脳へ分布し神経細胞の新生を促進することで、学習機能を向上させる可能性があると同社らは考察している。同社によると、同成分は血液脳関門を通過して脳に分布することが以前から確認されていたといい、実際、マウス試験の結果、アミノチオネインの経口投与後に、脳内のエルゴチオネイン濃度の増加が認められたとしている。
アミノチオネインは、食用キノコのタモギ茸を原材料とし、エルゴチオネインの含有量を1%以上で規格化したエキス末原料。タモギ茸は、学校給食にも近年活用されるなど食経験がある。
エルゴチオネインを規格化した食用キノコ抽出物を供給している先は同社以外にも存在するが、ブレイン・フードとして明確に訴求する動きは従来なかった。「イチョウ葉エキスとの差別化素材、あるいは作用メカニズムが全く異なるため、複合素材としても提案していきたい」と同社の開発担当者は話している。
【写真=エルゴチオネインを多く含有するタモギ茸】