JADAのサプリ分析問題 プロセスに疑問の声(2016.10.20)
スポーツサプリメント中のドーピング禁止物質の分析に係る問題が、ここにきて再度浮上している。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の認定商品を販売していた㈱ドームは今月、同機構の認証プログラムを取り止め、英国の分析企業の認証を受けることを発表した。ドームによると、分析に関して不透明感がぬぐえず、また、大手広告代理店を介したJADAの閉鎖的な運営手法にも疑問を持たざるを得なかったためとしている。日本にはスポーツサプリメントを含む食品分野のドーピング禁止物質を分析する機関がなく、2010年東京オリンピック・パラリンピックに向け、課題となりそうだ。
分析結果なぜか非開示 cGMP認定義務化等も
㈱ドームは、陸上短距離のケンブリッジ飛鳥選手ほかプロ野球やサッカー選手、チームなどへのサポート活動を行っており、スポーツサプリメントでは「DNS」ブランドを販売していることで知られる。
JADAでは、2000年頃から、スポンサーシップを条件にスポーツサプリメントの認証(JADA認定商品)も行っており、商品の分析は公益財団法人・日本分析センターに委託している。ドームも当初からこのプログラムに参加していた。
しかし、JADAは2014年に大手広告代理店を介して、スポンサーシップと商品認証プログラムの改定を通告。スポンサー料の大幅値上げやcGMP(米FDAによるサプリメント分野の認証)の認証取得義務化などを2年間の移行期間後に実施するとした。
これに対しドームは、JADAによる分析結果の非開示や分析プロセスへの疑問などから、改定に難色を示し、今月になって、JADAの認証プログラムを取り止め、英国のサプリメント専門のドーピング分析機関であるLGC社の認証プログラムに切り替えることを決めた。
現在、JADAのスポンサーシップに参加し、商品認証を受けている企業は、大塚製薬、味の素、明治、森永製菓の4社だが、中にはサプリメントではない加工食品も認証を受けており、cGMP認証との整合性も課題になる。分析は日本分析センターが委託を受けているが、ドームによると、一連の分析プロセスには「疑問を禁じえない」(同社幹部)という。
また、cGMPの取得義務化は、国内に同認証を取得している工場がわずかしかなく、大部分が生産受託企業であるため、そこに委託先を持たない明治などはコスト負担増となる見通しだ。ドームでは「日本のGMP認証で十分カバーできるはず」(同)としている。
こうした状況に関してスポーツ庁では、「スポーツ選手はスポーツサプリを取らざるを得ない事情がある。選手の安心のためにもドーピング禁止物質が入っていないことを認証したサプリが求められていることは確か」(同庁国際課)としながらも、「アンチ・ドーピングに係る取り組みは、あくまでJADAの担当」(同)との姿勢だ。
ドームが新たに委託する英LGC社は、スポーツサプリのドーピング分析に関する豊富な実績があり、そのTSP認証は国際的に評価されているという。
一方、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)は、スポーツサプリメントの認証は行っておらず、LGC社自体は、WADAや他の国際機関から認証を受けている分析機関ではない。
ドームによると、「アンチ・ドーピング機関がスポーツサプリメントの認証を行うのは本来、不適当」(前述の同社幹部)とし、WADAとLGC社が全く別組織となっていることで、LGC社の認証の信頼性が確保されているという。
日本ではこうした体制になっておらず、JADAの認証を受けるには、同機構のスポンサーになる必要がある。この仕組みがアンチ・ドーピング活動に資するものなのか、今後、議論が起こりそうだ。
スポーツ選手のドーピングは、意図的なもののほかに、摂取した食事やサプリなどに起因して意図せずに禁止物質が検出されるケースもある。
国内の競技団体関係者は、「どんな事情でも禁止物質が検出されれば、選手にペナルティが課される。選手にとっては安心できるサプリが欲しい」と不安を隠さない。
日本人選手の不安を解消しスポーツサプリメントメーカーをレベルアップさせるためにも、公正かつ透明な組織の運営と厳正な規律、確固とした分析体制の整備が求められそうだ。