今後どうする品質管理 関与成分問題で課題浮上(2016.11.24)
いわゆる健康食品から特定保健用食品、さらには特別用途食品まで、品質管理に関わる課題がここにきて顕在化している。植物エキスなど抽出物を、制度対象に条件付きで正式に加える方向となっている機能性表示食品でも、その追加を巡る議論では品質管理に焦点が当てられていた。そこにぶつけるがごとく浮上してきたトクホの関与成分量など一連の問題。機能性表示食品の届出ガイドライン改訂作業を今後進める消費者庁の意識に影響を及ぼしたのは間違いないといえそうだ。企業責任による品質管理のあり方が問われている。
9月末に消費者庁が初めて下したトクホの表示許可取消し処分。関与成分量が規定量を満たさなかったり、許可された関与成分が別の成分だったりしたことが申請者の自主検査で発覚したことに端を発したこの問題は、同庁が関与成分量などに関してトクホの全品調査を指示するという異例の事態を引き起こした。
この調査に絡める形で同庁は、日本健康・栄養食品協会を通じ、トクホの品質管理の徹底を全ての許可取得企業に要請した。「消費者からの信頼を取り戻すための強力な取り組みを推進」するよう求めている。
健康食品や機能性表示食品と異なり国の許認可を伴うトクホで発覚した関与成分量の問題は、申請者の品質管理の甘さに起因するといえた。これを受けて同庁は、同じく許認可制を採る特別用途食品についても品質管理調査を実施。その結果、申請者を同じとする低タンパク質食品(病者用食品)の2品目で規定量の超過が発覚することとなった。
健康食品も無傷ではいられていない。大麦若葉青汁に本来含まれないはずの小麦成分の含有が小売店の自主検査で確認されたり、プラセンタ飲料に基準値以上の安息香酸が含まれることが自治体の収去調査で発覚し、食品衛生法違反を問われたりといった事態が最近発生した。いずれも自主回収が行われている。
機能性表示食品も同庁が昨年度実施した買上調査の結果、品質管理上の課題が一部で見つかっている。機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていたり、逆に、過剰に含まれていたりするものが確認されたほか、「同一製品にもかかわらず2ロット(または2パッケージ)間でのばらつきが大きい」(同庁)ものも認められたという。
このように品質管理が万全とは決して言えないことが明らかになった中で議論が進んだ「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」。25日の最終会合で報告書のとりまとめが行われる見通しだが、植物エキスなど抽出物の制度対象化を巡っては、生薬の取り扱いに近い品質管理方法の必要性が言及されている。
そのような中で突如浮上してきたトクホや特別用途食品の品質、あるいは品質管理を巡る問題は、企業責任で食品の機能性を表示する仕組みに対する同庁の不安を増幅させた可能性が高いといえそうだ。抽出物を制度対象に加えることになる次の届出ガイドライン改訂版は、相当に厳しい品質管理規定を盛り込んだものとなることも予想される。
仮に、そうした厳しい規定に業界が対応することで機能性表示食品の品質管理の適正化が図れたとしても課題は残る。制度に乗ることのできない健康食品の品質管理をどうするのかという課題だ。市場流通アイテム数は機能性表示食品よりも健康食品の方が圧倒的に多く、同庁が厳格な「書類確認」などを行っている中では、当面のところ状況は変わらないと考えられる。
そのうえで、同庁をはじめとする行政、そして業界ともに、品質管理に大きく関わる「GMP」のあり方を改めて考える必要性に迫られているのではないか。機能性表示食品のサプリメントは大半がGMP認定取得工場を製造所としている一方で、買上調査で品質管理に関する課題が明るみになった。表示許可取消し処分を受けたトクホにしても、製造していたのはGMP認定工場だったとみられている。