健康食品など起爆剤に TPP、FTAへの対抗策で (2016.11.24)
米大統領選の影響でTPPの動向に注目が集まる中、経済産業省と農林水産省が取り組む「農商工連携・6次産業化」が、ここにきて活発な動きを見せている。機能性表示食品など健康食品がひとつの起爆剤となりそうだ。
今月11日、新潟県南魚沼市で「健康ビジネスサミット うおぬま会議2016」が開催された。全国有数のコメ産地である新潟県は、それだけに農業への危機感は強い。会議に出席した県商工部の利根川雄大課長は、TPPの発効が延期濃厚となっても先行きに不安を隠さない。「TPPの動向に関係なく農産物の高付加価値化に力を入れる。農産物を(機能性食品などの)工業製品と捉えればアプローチも変わってくる」と語る。
農水省によると、日本の農業従事者は1995年の約256万人から、2015年は177万人に減少。平均年齢は67歳に達しているという。農地価格(純農業地域)も1995年以降、21年連続で下落しており、最近は大都市から離れた地域で離農者が急増しているという。
うおぬま会議で講演したアミノアップ化学の小砂憲一会長(北海道バイオ工業会理事会長)は、フード特区(北海道フード・コンプレックス国際戦略特区)や北海道独自の健康食品認定制度「ヘルシーDo」の取り組みを説明したが、ポイントは機能性表示食品など高付加価値商品だという。「農産物扱いだと生産者に価格決定権はない。だが付加価値のついた商品であれば、われわれにも価格決定権が持てる」。
自治体による独自認定の動きは、各地で広まりつつあり、新潟市は今年9月に制度をスタートさせたほか、四国では4県共通の認定制度導入に向けた検討が進んでいる。
また、うおぬま会議では、中小企業のアジア市場進出も重要なテーマとなった。森下仁丹の駒村純一社長は、タイ市場進出の事例を紹介。同国の提携企業幹部によるプレゼンテーションも行われた。
同社によると、中国、インドほか東南アジアでは近年、健康志向が高まっており、日本の機能性表示食品などは、非常に有望なアイテムだという。同社も来年からタイで健康食品の本格的な市場開拓に乗り出す方針だ。
こうした中、21日に東京の農水省本館で開催された「農商工連携・6次産業化フォーラム」は、300名を超える参加者で埋まった。経産・農水省による農商工連携の取り組みは今年度で10年近く経つが、事業計画の認定はここ数年で急増。現在705件に達している。
農水省は「昨年導入された機能性表示食品は、農業の6次産業化のひとつの注目分野。なんとか農林水産事業者の所得向上に繋げたい」(産業連携課)と切迫感をあらわにする。
経産省は中小企業庁が担当しており、同庁も「中小企業対策からも農商工連携の重要度は格段に増している」(経営支援課)と期待を込める。
TPP情勢は不透明だが、トランプ新政権は代わりに日米FTAを締結することで、農産物輸入に圧力をかけるとの報道もある。農業・食品を巡る動きは、今後ますます激しくなりそうだ。
【写真=約300人が集まった農商工連携フォ-ラム(11月21日、霞が関・農水省)】