機能性関与成分検討会 報告書案公表 糖質・糖類エキス等追加 (2016.12.8)
今年1月に始まった消費者庁の「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」は、追加会合も含め全11回の会合をこのほど終え、現行制度で対象外とされている糖質・糖類、機能性関与成分が明確でない食品(植物エキス等)を今後、条件付きで制度対象に組み込むことで最終的に合意した。ただ、ガイドライン改正作業に長期間を要することなどが予想されるため、施行時期を見通すのは困難な情勢。業界からは、早期施行を望む声があがる一方、施行後の混乱を避けるためにも慎重に取り組むべきだとする意見も聞かれる。
検討会は11月25日に最終会合を開催。これまでの議論を踏まえて消費者庁がまとめた報告書案を了承した。
報告書案では、業界やアカデミアの一部が要望していたビタミン・ミネラルの制度対象化について、「健康・栄養政策との整合性を図りつつ、まず栄養機能食品制度において、別途検討すべき」とし、事実上のゼロ回答。今後、栄養機能食品制度の枠組みで、ビタミン・ミネラルの第三次機能表示を拡充できるかどうかが検討される方向だ。
報告書案の中身を巡っては、委員から細かな指摘もあったため、同庁が修正を行い、座長一任のうえで成案を取りまとめる。成案は、年内にもまとまる可能性が濃厚だ。その後、同庁は、有識者や業界関係者などの意見も聞きながら、ガイドライン(GL)の改正作業に入る。
同庁は、改正GLの公表時期について明言を避けている。ただ、「素案が今年度末までにまとまるかどうか」との見通しも示しており、次年度が始まる来年4月早々に施行される可能性は薄そうだ。「とくに機能性関与成分が明確でないものは(GLの)検討に時間が掛かる」との認識も示している。
報告書案は、糖質・糖類やエキスを機能性関与成分とするに当たっての基本的な考え方などを示したもの。糖類・糖質では、ブドウ糖や果糖など、主としてエネルギー源とされる成分を除くものを対象とする大筋は示されているが、「具体的な要件についてはGLにおいて定める」とされている。植物エキス等も、対象範囲や同等性の確認方法をはじめ生産・設備および品質管理の方法などといった重要項目の具体に関してはGLに下駄を預けた格好。「別途有識者等による意見を踏まえGLの作成を行うべき」とされており、有識者間で意見が割れれば同庁が想定している以上に時間の掛かる可能性もある。
糖質・糖類、植物エキス等を機能性関与成分の対象に追加するに当たり同庁は、内閣府令の改正は行わず、主にGL改正のみで対応する方針だ。
そのため、改正GLがまとまりさえすれば制度施行は可能と考えられるが、今年4月から届出データベースの運用を開始しているため、その修正も必要。その上で、検討委員の一部が要望していた、改正GL案に基づく届出の試験的な運用を、高い確率で実施する可能性も同庁は示唆している。
届出の試験運用が実際に行われれば、運用結果を踏まえたGL案の修正が必要となる可能性もあり、最終的な改正GLの公表は、来夏以降まで持ち越される場合も考えられる。検討会の最終会合で、座長から改正GLの策定時期を訊ねられた同庁担当課は、「確定的なことは申し上げられないが、今年度末から来年度末を一つの目安として作業、検討を進めていきたい」などと極めて幅広な見通しを示した。現状では、同庁としてもその時期を見極め切れていないものとみられる。
一方、改正GLの策定が遅くなればなるほど、業界に混乱の広がる可能性がある。新たに臨床試験を実施しエビデンスを積み上げた上で植物エキスの届出対応を検討しているある企業は、「GLのない中で試験に着手するのは非常に不安だ。研究投資が無駄になりかねない」として「来年も(制度施行時と同様に)GLに振り回されることになる」とため息をつく。
他方で、別の業界関係者は、拙速にGLの策定を行えば、「(運用開始後に)混乱するのは目に見えている」と指摘した上で、「試験運用期間も必要だ」と話す。ただ、「どんなに慎重に(GLを)作ったとしても混乱は必ず起こる。それならば早く出してもらったほうがよい」(業界団体幹部)との意見もあり、業界内でも捉え方が割れている。