政府 農産物の輸出強化策決定 機能性表示の動向に注目(2016.12.8)
安倍政権による農産物の国際競争力強化のプランがこのほど固まった。焦点の農協改革は議論の余地を残したものの、TPPの動向に関係なく、日本の新たな輸出産業として、農林水産業分野を育成していく方針だ。機能性表示食品制度は今後、そのひとつの鍵になっていくことが想定される。
政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」(本部長・安倍普三首相)は11月29日、会合を開き、「農業競争力強化プログラム」と「農林水産物輸出インフラ整備プログラム」を決定し、「農林水産業・地域の活力創造プラン(改訂版)」に盛り込んだ。
焦点の農協改革は、11月25日に自民党で改革案が了承されたことでほぼ決着。29日の本部開催と農業競争力強化プログラムなどの決定に至った。「農林水産業・地域の活力創造プラン」は改訂された形となっているが、ほぼ完成の姿となった。今後は同プランに基づき、さまざまな制度改正、予算措置などが講じられていく見通しだ。
同プランにはすでに関連する規制改革として、機能性表示食品制度の導入が盛り込まれていたが、これは「措置済み」とプランには記載されている。
今回追加された「農業競争力強化プログラム」と「農林水産物輸出インフラ整備プログラム」は、生産資材価格の引き下げや流通・加工分野の構造改革、輸出促進に向けたインフラ整備などが中心で、農産物の機能性表示に関する内容は特に記載はない。
農産物の機能性表示に関しては、すでにプラン本体の中に「付加価値の高い農林水産物・加工食品の需要拡大のため、健康寿命の延伸に資する新たな機能性に関する科学的知見の収集・利用を促進」と記されており、特に果実類について「機能性成分高含有等の特長を持つ優良品目・品種の転換を推進」することが盛り込まれている。
機能性表示食品制度での生鮮食品の届出受理件数は、12月6日時点で5件と少ないが、今後は増加することが想定される。
ただ、農産物の機能性表示の届出は、品種改良、臨床試験、SRなど、エビデンス確立に時間がかかるため、制度導入2年足らずではまだ見えないという。
農水省では、政府の決定を受け、生鮮食品の機能性表示に向けた研究にさらに拍車をかける方針だ。来年3月にも新たな施策が打ち出されるとの見方もある。