届出 「時間かかり過ぎ」 規制改革推進会議が問題視 (2016.12.22)
届出公表までに1年以上かかるケースも頻出している機能性表示食品制度の運用改善に向け、政府の規制改革推進会議が動き出した。14日に開催した医療・介護・保育ワーキンググループ(WG)の会合で、出席した消費者庁担当課に改善策を講じるよう強く要求したようだ。同じく会合に出席した日本通信販売協会は、現状では販売戦略すら立てられないとして、届出書提出から60日以内の公表を訴えた。
「60日以内」を要望
機能性表示食品の届出書類の提出総数は、制度施行から2年を待たずに1400件近くに達している。一方、公表件数は600件足らずにとどまるのが現状。相当数が公表に至らず、宙に浮いたままの格好だ。
会合は非公開。規制改革推進室によると、同WGは、届出書の初回提出から公表までに300日以上掛かる場合もある消費者庁の制度運用を強く問題視しており、次のヒアリングまでに追加の対応策を検討するよう求めた。一部の委員からは、「そもそも上から目線。差し戻しが4回、5回もあるというのは、企業に対するいじめだ」といった辛辣な意見も繰り出された。
一方で、同庁担当課の認識は「最善を尽くしている」。適切な届出書類を提出してもらうための文書の発出をはじめ届出データベースの運用開始、確認体制の人的強化といった取り組みをこれまでに行ってきたと説明したという。しかし、それでも状況は改善しない現実がある。
会合に出席した日本通信販売協会はこの日、現状の課題分析と、その改善に向けた改革案を提案。最大の課題として「届出から公表までの期間が不透明」であることを挙げ、そのため「収益のベースとなる新製品の販売戦略が立てられない」、「お客様、株主、取引先などに説明責任が果たせない」と訴えた。
通販協はまた、届出公表までの期間について「販売戦略上、企業として許容できるのは60日以内」と指摘。300日以上も掛かっている現状では、機能性表示食品制度にこだわると経営に支障を来たし、「最悪の場合、健康食品へ回帰するリスク」があるとも訴え、状況改善のためには〝現状の見える化〟と〝改善工程表の作成〟が必要不可欠だと主張。この二つを規制改革推進会議がフォローアップするよう求めた。
一方、規制改革推進室によると、WGと同庁担当課の質疑応答では、届出書類の確認が適正に行われているかどうかを巡り、厳しいやり取りがあった。WGは、届出書類の内容にまで踏み込み、実質的な審査のようなものを行っているのではないかと指摘。これに対して担当課は、食品表示基準やガイドラインの要件に適合しているかどうかを形式的に確認しているだけ、との説明を繰り返したという。
機能性表示食品制度に取り入れられた「届出」は、記載事項に不備がないなど、形式要件に適合した書類が提出機関に到着した時点で義務が履行されたものとして取り扱うことが行政手続法で定められている。そのため、届出には本来、「受理」という概念はない。
規制改革推進室によればWGからはこの日、ガイドライン等の要件に適合しているかを確認すること自体が、形式要件ではなく実質要件の確認に当たるとの指摘も出た。同庁担当課は、「事前チェックが一切不要ということはあり得ない」と述べ、事前確認の必要性を主張。一方、WGは「食の安全を無視するつもりはないが、事後チェックを強化することで改善策があるのではないか。審査は後でも構わないのではないか」と問題提起したという。
この日の会合には日本健康・栄養食品協会の下田智久理事長も出席し、届出手続きの改善案を提案した。「民間の力を活用し、行政と事業者の協力のもと届出事務の効率化を図る」として、「第三者機関による届出資料の事前チェック」、「公表例のある機能性関与成分などに関する届出は第三者機関が確認を代行」といった案を披露。この案に一部の委員は賛意を示したもようだが、同時に、第三者機関を運営する費用は企業側が負担すべきだとする意見が上がったという。
また、日健栄協は、制度の問題点として、生鮮食品の届出公表数が少ないとも指摘し、数を増やすためには「公的機関や民間団体を活用し、生鮮食品の特性を考慮したヒト試験法の確立等の技術的支援が必要」などと訴えた。ただこの主張に対し、業界団体関係者の一部からは、「いつから農業関連の業界団体になったのか」などと疑問の声も聞かれる。
なお、同WG委員の一人は、大阪大学大学院教授で日本抗加齢協会副理事長でもある森下竜一氏。同氏は今月5日、同協会主催フォーラムに登壇し、届出公表までに長期間を要している現状に問題意識を表明。「このまま放置できない」と延べていた。