日本サプリメントに措置命令 景表法適用 二度目の処分 (2017.2.23)
健康増進法に基づく特定保健用食品(トクホ)の許可取消し処分を昨年9月に行っていた日本サプリメント(大阪市北区)に対して消費者庁は14日、景品表示法に基づく措置命令を下した。取消しまでの間、許可要件を満たさないにもかかわらず「トクホ」と称していたのは優良誤認に当たると判断。しかし同社は「許可取消しまではトクホだったと認識している」と話し、許可要件を満たしていたと主張。双方の見解は割れている。
優良誤認を認定 「許可要件欠く」
国の許認可が伴う食品表示制度の信頼性が揺らいだ事態に対し、厳しい姿勢を崩すつもりのないことが浮き彫りになった。事実上の同一事案で二度にわたり行政処分が下されたことに、業界からは驚く声も上がる。
処分はこれで終らない可能性が高い。景表法の執行を担当する消費者庁表示対策課は、昨年4月に導入した景表法に基づく課徴金についても「現在調査中」としている。優良誤認を認定した表示対象期間の一部が昨年4月以降に食い込んでいるため、課徴金の行政処分も追加して下される可能性が高い。
表示対策課が優良誤認を認定したのは、同社が販売していたトクホ全商品。具体的には、かつお節オリゴペプチドを関与成分とする「ペプチドシリーズ」5商品、豆鼓(とうち)エキスの「豆鼓シリーズ」3商品の計8商品で、両シリーズとも関与成分に疑義が生じたため同社が自主的に販売終了を決め、トクホ制度を所管する同庁の食品表示企画課が昨年9月、健増法に基づき許可を取り消していた。同社が関与成分に関する疑義を認知してから同庁に報告するまでに最大2年以上経過していたこともあり、報告の遅れも重く見た取消し処分だった。
その後は表示対策課が調査を継続。主婦連など消費者団体が、許可取消しだけでなく景表法などより厳格な法令適用を求めていた。
「見解に相違」弁明認められず
表示対策課は調査の結果、両シリーズとも①遅くとも2011年8月以降、申請していた品質管理として、包装後の製品における関与成分についての品質検査が行われていない②14年9月(豆鼓シリーズは10月)に関与成分の特定ができないことが外部機関の指摘により判明していた――以上2点について事実認定し、トクホの許可要件を満たしていなかったと判断。そのうえで「消費者庁許可保健機能食品(特定保健用食品)」などと表示していたのは、表示と実際が著しく異なる優良誤認に当たると断定した。
同課は14日に開いた会見で「(トクホに求められる)品質管理を行っていないこと。そこをまずは問題にしている」(大元慎二表示対策課長)と強調した。
ただ、同社は「見解の相違がある」とする。品質管理については両シリーズとも原料段階で阻害活性が必要値を満たしていることを全ロットで確認していたとし、「お客様に求められる効果は担保できていた」とコメント。〝血圧が高めの方に〟と表示していたペプチドシリーズはACE阻害活性値を、〝糖の吸収をおだやかにする〟としていた豆鼓シリーズはα‐グルコシダーゼ阻害活性値をそれぞれ確かめていた。
また、関与成分が特定できないとされたことについても「原料の変更も製法の変更もない」としつつ、「阻害活性に関与している成分の存在は否定されていない」とし、許可取消しを受けるまでは「トクホだったと認識している」と話す。関与成分の疑義に関する同庁への報告が遅れたことについても、原因究明のための調査を行っていたためだったとし、「命令は厳粛に受け止めるが、弁明が認められなかったのは残念」とする。
一方、表示対策課は調査結果を受け、両シリーズとも「関与成分が不明」との認識を示す。関与成分が不明であれば、有効性や安全性を評価できず、品質管理も行えないため、「許可要件の全てを満たしていない」と指摘。「生薬のように何が効いているか分からないのではトクホにはならない」という。
また同課は、そもそも同社は許可申請時、「包装後の製品ロットごとに関与成分の分析を行う」と申請していたと説明する。その一方で「消費者庁に報告することなく勝手に別の方法で品質管理を行っていた」とし、「申請時と異なる方法で品質管理をするというのは大変問題」だと話す。
さらに、原料段階で阻害活性値を確認していたとする同社の弁明についても、「原料から製品に至る一貫した品質管理による有効性と安全性の保障が担保」されることがトクホには求められるとし、阻害活性の確認だけでは「原料段階においても関与成分の検査は行われていないと言って差し支えない」と断じた。
関与成分不明? ならば許可なぜ
同社が申請の通りに関与成分の分析を行わなかった理由は判然としない。ただ、「阻害活性を確認するだけでは適切な品質管理とはいえない」とする指摘は業界内からも出ている。同じ活性を持つ成分を後から添加することで必要な活性値を満たすような「演出」も不可能ではないためだ。同社のみならず両シリーズを受託製造していた先の品質管理体制も問われることになる。
一方で、表示対策課が事実認定した通り、「関与成分が不明」なのだとすれば、トクホとして許可されたこと自体に疑義が生じることになる。両シリーズとも厚生労働省が制度所管している時代に許可されたもので、関与成分の分析を担当したのは国立健康・栄養研究所だった。
表示対策課は、許可時点の関与成分はどうだったのかについて、「(申請の通りに)データが出たのだろうと思う」と話す。ただ、「その時点の判断までは今回検証していない」として多くを語ろうとはしない。
両シリーズとも許可された関与成分は抽出物だった。ペプチドシリーズは「LKPNM」、豆鼓シリーズでは「トリス」という成分がそれぞれ主要な関与成分とされていたものの、これらは天然抽出物に特有の、機能性にも関与する品質管理のための「指標成分」の一つだったと考えられる。
両成分とも許可時点では申請通りに定性・定量分析できていたのだとすれば、一体どこへ消えたのか──。特有の技術を求められる場合もある抽出物の分析方法と品質管理を巡り、関与成分問題は今後も尾を引くことになりそうだ。抽出物の一部が制度対象に今後組み込まれることになる機能性表示食品への影響も考えられる。