ヘルスケア食品を海外へ 輸出促進目指す懇話会 (2017.3.9)
機能性表示食品など健康食品の海外輸出を促進させるための課題・戦略を研究することを目的にした懇話会を、日本抗加齢協会(吉川敏一理事長)がこのほど立ち上げ、先月27日、都内で「キックオフセミナー」を開催した。健康食品業界関係者が参加、主催によると申込みは会場定員の100名を超えた。海外の食品機能性表示制度との「相互認証」を将来的には目指したい意向が関係者から示されたこともあり、突如立ち上げられた同懇話会の行方が注目されている。
機能性表示食品の届出支援事業も展開する同協会が新たに立ち上げたのは、現時点では仮称だが「健康食品輸出振興懇話会」。
セミナーの冒頭で挨拶に立った同協会副理事長で、規制改革推進会議委員でもある森下竜一氏は、「日本で大きな産業に育った健康食品だが、対外輸出は非常に少ない」と指摘。その上で、懇話会の発足目的について「農業の六次産業化、あるいは機能性表示食品制度といった新しい制度が始まった中で、日本の品質の良い、安全性の高い農産物を含めた健康食品を海外に輸出し、日本経済の活性化につなげるための方策などを議論していきたい」と述べた。
相互認証について言及したのも森下氏。「機能性表示食品、あるいはトクホとして認められたものについては、海外で自動的に認証されるような『相互認証制度』まで踏み込めないかと考えている」と長期展望を披露。
「そのために必要な制度の理解、あるいは制度改正につなげていこうという思い」で懇話会を立ち上げたと語った。医薬品・医療機器分野では、日本と一部の国との間で相互認証協定が結ばれ、制度運用がすでに始まっているという。
この日のセミナーには、農林水産省、経済産業省、消費者庁の幹部も登壇。消費者庁食品表示企画課の赤﨑課長は、食品機能表示制度を所管する海外当局や在日商工会議所と「いろいろな形でコミュニケ―ションを取っている」と明かしたうえで、「諸外国の制度がどうなっているのかについても問題意識を持ち、制度の企画立案をさせてもらっている」と述べ、海外制度とのハーモナイゼーションが念頭にないわけではないとした。
また赤﨑課長は、森下氏が言及した相互認証について、「(海外制度との)同等性を担保するために、まずは我が国の制度をしっかりしたものにする必要がある」と指摘。また、実際に相互認証を目指すにしても「すぐにできるものではない」との見解を示したうえで、「現時点からぜひ心掛けていただきたい」として、機能性表示食品にせよ特定保健用食品にせよ「しっかりとしたエビデンスに基づいた商品展開をしていただきたい」と呼び掛けた。そうすることで「海外に打って出る場合でも、信頼性が担保される形で事業展開ができると思う」。
一方、経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課の江崎課長は、「食品の場合は、価値を伝えるときに、効果が見えにくい」ことがデメリットと指摘。そのため、「『これさえ食べればよいと』いう提案だけでは決してビジネスにはならない。運動と食事をセットにした形で価値を示していくことが重要」だと語った。