特定保健用食品 改正制度の運用始まる(2017.3.23)


 消費者庁は17日、特定保健用食品制度に関する内閣府令と次長通知の一部改正を公布し運用を開始した。昨年9月に明るみになった関与成分問題の再発防止策の一環として改正したもので、許可取得企業は、許可商品の安全性や有効性、品質管理などに影響を与えるおそれのある新たな知見を入手した場合、入手30日以内に同庁への報告義務が生じる。また許可された関与成分等について、少なくとも年に1回は許可試験と同様の試験検査を第三者機関で実施し、試験検査成績書や品質管理の状況などを都道府県経由で同庁に報告することも義務化された。

 一部改正したのは、「健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令」と消費者庁次長通知の「特定保健用食品の表示許可等について」。これらの改正に合わせて「質疑応答集」も一部改正した。

 内閣府令の一部改正で「新たな知見」の報告が義務付けられた。新たな知見の情報収集にも努める必要がある。定期的な分析試験の実施及び結果報告の義務化は次長通知改正によるもの。

 新たな知見の範囲については次長通知の別添「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」に追記。安全性に関しては「死亡、重大な疾病等が発生するおそれがあることを示す知見」▽有効性は「保健の用途に係わる効果を持たないことを示す知見」など▽品質管理は「申請時の分析方法と比べて高性能の方法により、審査時の結果と異なることを示す知見」「品質管理において、原料等の規格が維持できないことを示す知見」──などと説明している。

 関与成分量などの定期分析試験については、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(国立栄研)か、登録試験機関で実施する必要がある。報告については、前年度に実施した試験検査結果を毎年6月末までに同庁へ提出しなければならないという。このため平成29年度に限っては提出を求めず、平成30年度以降から完全義務化する。

 こうした制度改正の狙いは、特に品質管理面に重きを置いた「事後チェック体制」の強化といえ、これにより問題の再発防止を図る方針。それに加えて今後、同庁として買上げ調査を定期的に実施していく方向にある。

 買上げ調査はもともと来年度からの実施を予定していたが、関与成分問題を受け、今年度に前倒して一部実施済み。17日までに7品目を買い上げて第三者機関に関与成分量の分析試験を依頼した。分析結果は今月末までにまとまる見通しで、同庁は分析結果を精査したうえで公表する予定。

来年度からは流通品目数の1割に相当する35品目程度を調査する計画だ。
 トクホの制度及び運用の見直しを求める中で更新制の再導入を主張していた消費者委員会は21日に本会議を開き、一連の再発防止策について「大きな前進があった」(河上正二委員長)として同庁の取組みを評価した。更新制の代替策としてある程度認めたものとみられる。一方、買上げ調査の結果については「消費者の知る権利もある」(同)とし、可能な限り早く公表するよう求めた。

消費者庁が着手 機能表示巡る消費者教育事業
 消費者庁が栄養成分表示と保健機能食品の消費者教育に乗り出す。全国展開を視野に入れた準備を今年度から着手。保健機能食品の表示などに関する適切な活用方法を検証し、消費者や消費者教育実施者などに活用ノウハウの普及を目指す。21日に行われた消費者委員会本会議に出席した同庁食品表示企画課が明らかにした。

 今年度は「消費者教育調査事業」を進めている。消費者教育のあり方を検討するほか、理解促進のための活用媒体、活用媒体を効果的に使うための指導要領を作成。活用媒体は、「若年女性の食生活改善」「(中高年者の)メタボ予防」「高齢者の低栄養予防」など、ターゲット別に作成する。

 来年度は、同事業で作成した媒体と指導要領の実効性を検証する目的で、「消費者教育モデル事業」を実施。7月にも開設予定の「消費行政新未来創造オフィス(仮称)」を置く徳島県をモデル地域として同事業を進め、事業成果を踏まえ、「平成30年度以降、全国展開に向けた取り組みを進めていきたい」(食品表示企画課)という。

 同庁は、消費者教育事業の成果を、平成32年4月に控える栄養成分表示の完全義務化にも役立てたい考えだ。同課は、「効果検証を随時行い、やりっぱなしに終わらない消費者教育に取り組んでいきたい」としている。

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