ヤフオクに無承認医薬が多数 慶大薬学部教授ら調査 (2017.4.6)
インターネットオークションサイト「ヤフオク」に、抗ガン効果など医薬品的な効能効果をアピールする商品が多数出品されていることが、慶應義塾大学薬学部の大谷壽一教授(臨床薬学)らの調べで分かった。大半が経口摂取する商品。「インターネットオークションにおける無承認無許可医薬品の取引実態」と題し、日本薬学会第137年会で発表した。
違法の疑い600件以上
出品者の属性ははっきりしないものの、健康食品などの製造販売事業者ではなく、医薬品医療機器等法や景品表示法など関連法規制に明るくない、消費者に近い人たちが出品しているとみられる。ただ継続的に出品されている商品もあり、事業者の立場に近い人物が出品している可能性も無視できない。
出品者、サイト管理者ともに違法性の認識が低く、その結果として違法性の高い商品が恒常的に出品されていると考えられるオークションサイトの現状に対し、大谷教授は「商品自体による健康被害はなかったとしても、正しい医療を受ける機会を失い、間接的な健康被害を受ける可能性が高まることは大いに考えられる」と問題提起する。
調査は昨年6月~7月の2週間、2回に分けて実施。「医薬品の範囲準ガイドブック」(㈱じほう)掲載の医薬品的な効能効果に関する表現事例集を参考に、頭髪に対する効果▽皮膚に対する効果▽アンチエイジング効果▽消化管に対する効果▽制ガン効果──に関するキーワードを設定し、ヤフオクの出品商品を検索した。
その結果、1回目の調査では、事例集と照らし合わせて明らかに違法と判断できる商品を574件、必ずしも違法とは言えない「グレー商品」を48件、それぞれ検出。2回目の調査でも、違法商品594件、グレー商品40件を検出した。医薬品的な効能効果が表示されているのは、出品者が自ら作成したとみられる商品説明が大半だった。
検出された違法商品の実例としては、「肝臓がん防ぐ」として特定成分の配合をアピールするサプリメントとみられる商品、「便秘の解消、動脈硬化の改善、ガンの発生・促進の抑制」などと謳うパウダー状食品とみられる商品、「アトピーの緩和」「うつ病、自律神経失調症など精疾患(ママ)の予防緩和」「学習記憶能力の向上」などと標ぼうするドリンクとみられる商品などがあった。
ヤフオクの「ガイドライン細則」に記載されている「出品ルール」では健康食品について、薬機法を引き合いに出し、「医薬品的な効能効果や医薬品的な用法用量を表示あるいは示唆しないこと」と注意喚起している。ただ、大谷教授らの調査結果を踏まえると、ルールは形骸化している可能性が高い。
違反申告も反応うすく
大谷教授らは2回目の調査終了後、制ガン効果のキーワード検索で検出した違法商品87件のうち出品終了商品を除く66件について、ヤフオクのウェブサイトから違反申告を行った。その結果サイト管理者により削除されたのは1件(2%)のみ。出品者自らが取り下げたのも4件(6%)にとどまり、25件(38%)が落札されたという。
大谷教授らがヤフオクを対象に以前実施した医薬品の違法出品に関する調査では、違反申告を行ったおよそ100件余りのうち、およそ半数が取り下げられた。そのため大谷教授は今回の調査結果について、「医薬品の出品に対する違法性の認識よりも、違法性の認識ははるかに低い」と指摘する。
「この状況は看過できない」と大谷教授。「業界団体などを通じてオークション管理者や規制当局へさらなる監視強化を申し入れる必要がある」