セカンドオピニオン事業 優良誤認判断に活用開始 (2017.4.6)
消費者庁は今年1月から3月末までに、景品表示法違反による行政処分を計13社に対して下した。このうち健康食品販売事業者は6社で、実際よりも著しく優良であることを示す不当表示の「優良誤認表示」を行っていたと判断。判断にあたって同庁は、全てではないが、昨年4月に始めた「セカンドオピニオン事業」を活用し、事業者が提出した根拠資料と表示の整合性・合理性を巡る科学的な調査を行った。不当表示と認定されないためには少なくとも、機能性表示食品と同等以上の科学的根拠を揃えておく必要がありそうだ。
最低限必要か 機能表示食並みの根拠
セカンドオピニオン事業は、食品表示監視を担当する同庁食品表示対策室(表示対策課)が処分の迅速化などを図る目的で、16年度新規事業として始めたもの。17年度も予算が計上されており、予算額は健康食品のインターネット広告の監視強化と合わせて2700万円。前年度比1200万円増となっている。
同事業では、事業委託する形であらかじめ用意した医学や薬学など学識経験者で構成される第三者組織に、景表法の不実証広告規制に基づき事業者から提出のあった表示の根拠と実際の表示の合理性や整合性を検証(レビュー)してもらい、その結果を踏まえて同庁が措置の内容を決定する。以前は事案ごとに個別に専門家に意見を求めていたため、手続きに時間がかかっていた。
また同事業の狙いには、健康食品成分・原料の有効性に関するレビューを実施してもらうこともある。レビュー結果については、消費者や事業者にも情報提供する目的で、国立栄研が運用する「健康食品の安全性・有効性データベース」に順次反映させている。
セカンドオピニオン事業を活用した初の行政処分は2月14日に下された。水素水関連食品で痩身効果や疾病に対する予防効果を得られるかのように表示していた3社に対する措置命令だ。
同庁によると、3社のうち2社は表示の根拠資料を提出。ただ、提出された論文などは「細胞試験、動物試験、病気の人を対象にした試験」だったといい、「一般的に食品が対象とするのは健常者」であるため表示の合理的な根拠に当たらないと判断したという。
細胞試験はもとより病者対象の臨床試験論文は、機能性表示食品制度でも現状、表示の科学的根拠としては認められていない。
根拠資料を巡り、同制度を意識していると思われる考え方は、別の事案でも認められる。目の症状を改善する効果を得られるかのように全国紙に掲載した新聞広告で表示していたなどとして、3月9日に措置命令を受けた長野県の健康食品通販事業者の事案だ。
いわゆる「アイケア」表示に対する同庁としては初の行政処分となったこの事案でも、事業者は根拠資料を提出していた。しかも根拠資料の中には、同庁によると、病者ではない被験者を対象にした論文も含まれていた。それでも表示の合理的な根拠と認められなかったのは、「提出資料の成分摂取量と当該食品の摂取量にはだいぶ差があり、少なかった」(表示対策室)ためだ。
根拠資料で有効性が示された摂取量と比べ、商品への配合量が少なかったために合理的根拠と認められなかった事案はほかにもある。
豊胸効果と同時に痩身効果が得られるような表示を行っていたとして30日付で措置命令を受けた都内通販事業者。同社が痩身効果について提出した根拠資料と表示の合理性については、同庁によると「根拠が認められた」。ただ、商品から摂取できる量は論文よりも少なかった。そのため痩身表示の合理的な根拠とは認められなかった。機能性表示食品でも、機能性関与成分について、有効性や安全性に関して科学的根拠が認められた1日当たり摂取目安量を確実に摂れる商品設計を行う必要がある。
景表法に絡む行政処分はこれまで痩身効果を標ぼうする食品が中心だった。ここにきて「アイケア」「バストアップ」と対象が拡大。市場の大きい「関節」などにも広がっていく可能性がある。足元をすくわれないためには、いわゆる健康食品についても、有効性に関する科学的根拠に基づく商品設計が求められる。