機能性表示食品制度 運用改善要求 依然厳しく (2017.4.20)
機能性表示食品の届出長期化問題を改善するため、制度運用を担当する消費者庁の食品表示企画課長を交えながら、昨年12月と今年2月の2回にわたり議論した政府の規制改革推進会議ワーキンググループ(医療・介護・保育)。このほど公表された2月28日会合の議事録からは、森下竜一氏ら規制改革委員は、同庁の制度運用に対してまだまだ納得していない様子がうかがわれる。
「議論足りない」「引き続き注視」
「具体的な改善策についてはまだ議論が尽くされていない」。グループ座長の林いずみ委員は2月28日の議論の最後にこう述べ、「今後の改善策や進捗、成果などについて引き続き注視してまいりたい」とした。
また森下委員は、機能性表示食品で可能なヘルスクレームが「ブラックボックス」になっていると指摘。「いつも維持増進と言うが、一体、健康の維持増進というのは何なのか非常に恣意的な、裁量的な行政ではないか」「ここが明確にならないとメーカー側と消費者庁との意識のずれは縮まってこない」とし、健康維持増進の定義を明確化するよう求めた。
「一番の問題は何か」。このような根本的な疑問を投げかけた委員もいる。これに対して会合に出席した同庁食品表示企画課の赤﨑課長は、「まだ2年弱の制度ということもあり、制度を運営する我々の側がどう考えているのかが伝わっていない」とし、産業界とのコミュニケーションに見直すべき点があると率直に思いを述べた。
この日の会合で赤﨑課長は、届出改善のために「届出者の予見可能性向上」に取り組むと説明。業界団体との情報共有の強化、業界団体からの質問に対応する専門窓口を同課内に設置といった、業界団体との連携強化や同庁の体制整備などに取り組む考えを明かした。これにより、業界とのコミュニケーション不足を解消したい考えもありそうだ。
届出Q&A、「年内にまとめよ」
一方、課長が説明した予見可能性向上に関する取り組みのうち、業界で注目されているのは、同課が新たに作成する「Q&A」だ。事業者から問合せの多い事項、ガイドラインにおいて分かりにくいと考えられる事項、届出資料において不備の多い事項や制度の対象外の事例──などを記載するもの。特に、最近の不備指摘で明記されている場合が少なくない、「制度の対象外」の内容が注目されている。
ただ、Q&Aを含めて届出改善策が最終的にまとまる時期の見通しは「(平成)29年度末を目途」(赤崎課長)とほぼ1年先。そのため森下委員は「29年度末は長過ぎないか。今年末までにお約束をいただきたい」と詰め寄っている。しかし、「制度の対象外」と不備指摘された事業者の中には、届出書類の内容を「白紙」に戻すかどうかの判断を迫られるケースも出ている。ヒト試験や研究レビューを実施した後に対象外と分かったところで後の祭り。Q&Aがまとまるのが今年末になるのだとしても、「長過ぎる」と言えそうだ。
そのほか、議事録から規制改革委員と赤﨑課長の主なやり取りをピックアップすると、被験者に18・19歳の未成年を含む科学的根拠論文の取り扱いに関するものがある。
日本の現行民法では未成年にあたる18・19歳の被験者を含む論文を届け出ると、同庁から不備指摘されるといった話が聞かれる。ただ課長はこの日、「18歳、19歳の方を含むことについて適切に考察されている場合は対象外とはしていない」と明言した。
課長によると「適切な考察」とは、基本的には医学的・栄養学的な観点から18・19歳が20歳以上と同等かどうかを考察することであり、例えば届出書類に「厚生労働大臣が食事摂取基準という栄養政策のベースになる基準を定めている。同基準は18歳以上を成人として見ている」などといったようなことを記載することだという。
一発受理1割 「いかがなものか」
また、届出のいわゆる「一発受理」がどれだけ存在するのかにも議論が及んだ。12月の会合で規制改革委員は、同庁が届出書類の形式確認ではなく実質審査を行っている疑いを課長に突き付けており、森下委員はこの日も「これ(一発受理)が増えてくれば届出なのだろうと思うが、もしそれがほとんどないのであれば、これは審査だろうと言わざるを得ない」と課長に迫った。
これに対して課長は、最初の不備指摘後に届出書類を取り下げた後に改めて提出されるケースなどがあるため「非常に難しい質問」と断ったうえで、「我々の皮膚感覚で見ますと、10%ぐらいはある程度1発で通ったものもあるというのが正直な実感」などと回答。ただ座長の林委員は、形式確認のみで手続が終わる届出制にもかかわらず一発で通ったものが1割程度というのは「いかがなものか」などと苦言。「本来の制度趣旨に立ち戻った形での改善策をお考えいただきたい」と釘を刺している。