健康被害相談事例を大幅改訂 都消費生活総合センター(2017.5.11)


 機能性表示食品に関する健康被害相談事例を先月公表していた東京都消費生活総合センターは、4月28日までに相談内容文を大幅に書き換え、ホームページに再掲した。書き換え前の文書は、商品名を伏せていた一方、表示する機能性や用量など商品特長を詳細に記載しており、特定の商品名を推測することも不可能ではなかった。同センターとして相談内容の裏付けを取っていないと考えられたこともあり、情報公開の仕方に疑問の声が上がっていた。

 この相談事例は、同センターが先月10日公表した、2016年上半期の「『危害』の消費生活相談の概要」に掲載された。都内在住40歳代男性から都に寄せられたとされる相談内容を記載したもので、「担当医の所見は『当該機能性表示食品による薬物性肝炎』」との記述があり、因果関係が立証されているとも受け取れたことから、業界内外に波紋を呼んでいた。

 しかし同センターは書き換え版で「当該機能性表示食品による」の記述を削除。さらに、当初あった、機能性表示食品の摂取から発症、診断までの経緯に関する詳細な記述も大幅に削除。特定商品名を推測できる記述も消した。結果的に情報量が著しく減ったため、当初版と書き換え版を比較すると、まるで異なる相談内容との印象も与えるものとなっている。

 同センターの相談課は、書き換えを行った理由について「(相談)事例が細かいと、その人限定の事例やアドバイスになってしまい、より多くの消費者に対する注意喚起という主旨から離れてしまう」という。

 ただ、そもそも同センターは、健康被害との因果関係がはっきりしていないにもかかわらず、特定商品名を推測できるような形で情報を公表していた。消費者団体「食の安全・監視市民委員会」が商品名の公表を求めた公開質問状に対して同センターの相談課は、「相談事例は消費者から寄せられた情報がもととなっており、商品と健康被害の関係等が立証されておらず、商品名をお答えできない」と4月28日付で回答。消費者から寄せられた健康被害相談の裏付けを取らないまま、情報公開していたことを認めたことになる。

 この公開質問状は、機能性表示食品制度の運用を所管する消費者庁にも提出されていたが、同センターから当該健康被害情報を報告されていたとみられる同庁の消費者安全課も、因果関係を確定できていないとしている。「消費者庁として事故原因等を確定した場合を除いて、個別具体的な健康被害情報の有無及びその内容の御質問については回答を差し控える」と回答要求を退けた。

 同消費者団体では、同センターの公表情報に基づき推測した、機能性表示食品5商品を販売する4社に対しても公開質問状を提出。しかし4社とも、当該健康被害相談事例と自社が販売する商品の関連を事実上否定している。

 同センターは書き換え版で、危害の因果関係について消費生活センターに立証を行う機能はないこと、明らかに事業者側に落ち度がある場合も多少はある一方で消費者側の使用・利用方法に問題がある場合も少なくないこと、多くの場合で因果関係の特定は困難であること──といった釈明を付け加えた。その上で「危害にあった場合は、販売事業者、製造事業者、役務提供事業者に速やかに申し入れをする必要がある」と消費者に注意を促している。

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