トクホ買上調査で2品判明 関与成分問題がまた 消費者庁(2017.5.25)


 関与成分に絡む問題に起因した初の特定保健用食品(トクホ)表示許可の取消処分から半年余りでまた、関与成分量が許可された規定値を下回る商品が見つかった。今回は事業者の自主調査ではなく消費者庁による買上調査が発見の端緒。同庁は、関与成分はトクホの「根幹」であるとの認識を示す。しかし今回に関し、現時点では、許可取消し処分までは踏み込まない方針だ。十把一絡げに処分するのでなく、「個別具体の事情の中で、我々として適正な判断を下していきたい」と言う。

「品質管理上の問題」
 買上調査は同庁が16年度に実施した。関与成分量が許可申請書記載の通りに含有されていないことが分かったのは、静岡市の茶・健康食品通販会社、佐藤園が表示許可を得ていた「ドゥファイバー 粉末スティック」「緑の促茶」の2商品のうち最近の製造ロット。いずれも食物繊維のグアーガム分解物を関与成分とする事実上の同一商品。前者は、同社からのOEMを受ける形で製薬会社の大正製薬が販売していた。
 グアーガム分解物は、機能性表示食品の機能性関与成分としても現在3品目が届け出られている。

 同庁は今後もトクホ買上調査を定期的に実施する方針で、調査件数としては、市場流通品目数のおよそ1割に相当する30~40品目を想定している。ただ今回は、昨秋の許可取消し処分に伴い実施予定を前倒して緊急的に行ったこともあり、計7品目(6社)と大幅に少なかった。それでも比較的高い確率で不適切な商品が見つかったことになる。

 調査結果を受け、佐藤園と大正製薬は、同庁が調査結果を公表した17日から当該ロットの自主回収、返金対応を始めた。今後、佐藤園は品質管理体制を強化した上で販売を継続する考え。一方、大正製薬では、ドゥファイバーを「終売する予定」(コーポレートコミュニケーション部)と言う。品質の高さを訴求してきた製薬会社にとって、販売継続の選択肢はあり得なかったといえそうだ。

 「品質管理上の問題と報告を受けている」。同庁食品表示企画課は関与成分量が表示値を下回った理由についてこう語る。ただ、そもそもこの2商品は、同庁が昨秋にトクホ全品を対象に緊急実施した関与成分調査の時点では問題が見つかっていなかった。しかも、この調査では自社の分析結果を提出することも認められていた一方で、第三者試験機関による分析によって申請通りであることが確認されていた。それにもかかわらず買上調査対象に選定されたのは、分析時期が14年と「古かった」(同)ためだ。

 同2品が許可申請書に記載し、有効性と安全性が認められ、表示していたグアーガム分解物の配合量は1包あたり2.6㌘だった。しかし、先の調査では問題は認められなかった一方、同庁が買上調査で分析を委託した第三者試験機関による分析値は、佐藤園によると2.15~2.55㌘。この結果について同課は、「8割以上は満たしているものの、規定量を下回っていたのは事実」だとしつつ、「著しく下回っていたわけではない」との見解を示している。

 一方、昨秋にトクホの表示許可取消し処分を受けた大阪府の事業者は、それも理由に優良誤認を認定され、景品表示法に基づく措置命令まで下された。関与成分量が規定値を下回り、その原因として品質管理上の課題があったのは今回も同じだ。ただ、同庁は、現時点では許可取消しまで踏み込む考えのないことを明言している。

原材料の品質管理に焦点 受入れ検査体制も問われるか
 消費者庁が16年度に行ったトクホの買上調査で関与成分量が規定値を下回る商品が見つかった。ただ同庁は、今回に関しては表示許可取消し処分を行わない考え。昨秋に同様の事例で取消し処分を下していたこともあり、疑問の声も上がる。

 処分をしない理由について同庁食品表示企画課は、「許可取消しという形よりも、まずは事業者の自主的な改善によって対応することが適当ではないかと現時点では考えている」とし、問題発覚後の事業者の対応を前向きに評価。「正しく品質を確認し、その上で製造を行えば、十分に規定量を担保した製品の製造ができる」とも述べ、品質管理に重大な落ち度はなかったとの見方も示す。

 「(関与成分量が規定値を)下回った理由が明確」だとも同課は語る。それも許可取消し処分を今回行わない理由の一つに挙げる。
 日本食品分析センターによると、食物繊維の定量分析方法には、プロスキー法(酵素重量法)と、高速液体クロマトグラフィ法(酵素HPLC法)の2つがある。

 このうち、比較的最新の分析方法は後者の酵素HPLC法とされるが、09年から10年にかけて許可された同2商品が許可申請した方法は前者のプロスキー法。今回の買上調査は許可申請時と同じ方法で分析が行われた。関係者によると、グアーガム分解物の原料供給事業者もプロスキー法で分析を行っており、過去はもとより今回問題となった製造ロットについても、原料段階の試験成績書では、食物繊維含量は規格値を満たしていたという。

 しかし、結果的に、買上調査では原料試験成績書とは異なる値が示された。「酵素HPLC法で分析すると規格値を拾えた」(佐藤園)という事情もあり、今回の問題の背景にも、分析方法の新旧が一部関わっている可能性は無視できない。ただいずれにしても突き詰めれば、同庁が実施した先の調査以降の製造ロットに関し、食物繊維含量の規格値をわずかに満たさないグアーガム分解物が、何らかの理由で生産・供給されたことになる。このことは原料供給事業者も否定していない。
 「詳細な原因は現在調査中」(佐藤園)ではあるが、それが買上調査で関与成分量が規定値を下回った理由だと同庁は見ている。

 佐藤園は、最終商品の製造委託先の品質管理に課題があった可能性は否定。ただ、原料の受け入れ検査に関しては、「原料メーカーの試験成績書の合格を確認し、受け入れ合格とする管理体制」を採用していたこともあり、製造委託先でも受け入れ検査までは実施していなかったという。

 実際、中小規模の受託製造企業でも2000種にも達するといわれる原材料の全てについて受け入れ検査することは極めて困難といえる。同庁の対応方針はどうあれ、今回の問題は今後、最終製品を製造する際の基点となる原材料の品質管理に改めて焦点を当てることになりそうだ。

消費者委 処分基準 透明化求める 保健機能食品全体に波及
 消費者庁によるトクホ買上調査で関与成分量が表示値を下回る商品が2品見つかった問題をめぐり、消費者委員会が同庁の対応に疑問や不満の声を上げている。同庁が表示許可を取り消さない方針を示しているためだ。関与成分や品質管理の問題を背景にした取消処分事例が実際あるだけに、「消費者にとって、取り消す場合と取り消さない場合があるのは分かりにくい」などと指摘する声が上がっている。

 また消費者委は23日、同日取りまとめた「消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見」の中に、トクホのみならず保健機能食品全体について、不適切な商品が見つかった場合の行政処分の是非に関する判断基準を明記するよう同庁に求める要求を新たに盛り込み、公表した。

 消費者政策に関して関係府省庁が実施すべき具体的な施策の取り組み予定を示す消費者基本計画工程表は、消費者委の意見を聴取した上で年に1回改定される。今年度の工程表改定素案に対して消費者委はもともと、食品表示に関して①消費者等への周知の強化と健康食品の表示・広告の適正化②トクホ等の制度・運用の見直し③機能性表示制度の見直しに関する取り組みスケジュールなどを明記するよう求める方針だった。

 その中でトクホの買上調査結果、それに対する同庁の対応方針が明らかになったことを受け、保健機能食品で不適切な商品が見つかった場合の行政処分に関する対応ルールとして判断基準の明確化のほか、当該商品の販売量や違反状況などに関する情報開示を検討するよう、追加して要求した格好だ。

 消費者委は23日に本会議を開き、買上調査結果について同庁食品表示企画課から聞き取りを行った。同課の説明に対して委員の間からは、「原材料をチェックするのはメーカー側の責任。厳しく取り締まるのが筋」「初歩的な品質管理ができていないにもかかわらず、悪質性がないと言っていいのか」などと厳しい意見が飛び交った。

 また、河上委員長は、「買上調査をして中身を審査するのであれば、審査基準や(結果に対する)対応方針をあらかじめ明らかにしておくことが必須」だと指摘した上で、今回の同庁の対応には「疑問がある」と不満を表明。ほかの委員からも、「許可取消しの基準が明らかにされていない」などとして処分基準の透明化を求める声が上がった。

 一方、同課は許可取消し処分を今回行わない方針である理由について、表示許可取消し規定を定めた健康増進法第28条との兼ね合いもあると説明している。この条項が現実的に発動されたのは昨秋の表示許可取消処分が初。同課は買上調査結果公表に合わせて17日に開いた会見で、今回のケースでは、同法規定に基づく許可取消しは「難しい」との見解を示していた。

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