溶出試験にどう対応? 識者指摘「課題極めて多い」(2017.7.6)
単一成分でなく多成分製品の多いサプリメントで溶出試験を行うには検討課題が極めて多い──。国立医薬品食品衛生研究所で薬品試験部長を務めた経歴もある識者がこうした厳しい認識を示している。エキス等を機能性関与成分にした錠剤、カプセルの機能性表示食品は今後、溶出試験の実施が求められる見通しだが、実行可能性は未知数と言えそうだ。サプリメントなりの溶出試験方法に関する議論の深耕を、業界全体で急ぐ必要がある。
業界全体で議論急ぐ必要
昭和52年から平成16年まで国立衛研に勤務し、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会委員も長く務めた谷本剛氏(医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団大阪事業所長)。先月26日、顧問・GMP審査委員長を務める日本健康食品規格協会(JIHFS)主催の講演会に登壇し、健康食品の品質確保をテーマに講演。溶出試験についても見解を述べた。
谷本氏は、医薬品領域での溶出試験とは本来、標準製剤(先発品)との著しい生物学的「非」同等性を防ぐ目的で行う、と言い、試験の適用対象についても本来、原材料が単一の製品や、機能性成分の化学構造など化学的本質が明らかなものに限られるとした。
逆に、溶出試験の適用が困難な製品として、エキスなど原材料自体が多成分で構成されているもの、多成分原材料中の機能性関与成分の化学的本質や定量法などが確立されていないもの、機能性成分の定量が高感度、かつ簡便に行えないもの──を挙げ、多成分系の植物エキスなどを配合したサプリメントで溶出試験を行う場合、「どの成分を指標として溶出性を見るかなど、相当の検討を要することになる」と述べ、試験基準を設定すること自体に大きな課題があると指摘した。
また谷本氏は、医薬品にせよ、健康食品にせよ、「有効性と安全性を担保するのは品質でしかない。この考え方は世界共通」だと指摘。そのため特に錠剤、カプセルといったサプリメント形状の健康食品については、品質確保のために、まずは機能性成分の定量・定性確認をしっかりと実施した上で、医薬品の品質管理で求められている崩壊試験、溶出試験、含量均一性試験を行うべきだとの認識を示した。
ただし、溶出試験に関しては、「機能性成分がちゃんと溶け出ている」ことを確かめるなどといった、医薬品における試験目的とは意味合いの異なるものにならざるを得ないと指摘。また、個々の製品が「自由な条件で試験を行っても意味はあまりない」と語り、個別のエキス等に関する溶出試験の基準を、業界として用意する必要があるとの見解を述べた。
機能性表示食品制度におけるエキス等の取り扱いなどについて機論した昨年の「機能性関与成分検討会」報告書では、錠剤やカプセル形状のサプリメントについて、同等性を担保するために、最終商品で崩壊性試験や溶出試験を行い、それらの分析結果を届出資料に記載し公開することが「適当」だとする考え方が盛り込まれており、実施は避けられそうにない。しかし、溶出試験まで実施している健康食品製造事業者はほとんど存在しないとみられ、「最大の課題と考えられる」(JIHFS)との指摘が出ている。