健康食品と健康被害 情報の出し方いかに 因果関係ある? (2017.8.10)
健康食品の摂取に伴う健康被害情報を行政機関が公開するケースが増えている。事実関係を調べていないにもかわらず、商品名を容易に推測できる形で情報公開した機関もあり、情報の出し方が問われるところ。ただ、因果関係は明確でないにせよ、健康食品による健康被害を訴える消費者は決して少なくない現状もある。
「若い女性に被害が多発! 安易な摂取は控えましょう」。プエラリアを含む健康食品で先月こう注意喚起していた国民生活センターは3日、今度は「健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがある」などとして、健康食品全般に関する消費者への注意喚起を行った。
国民生活センターが14年8月に設置した「医師からの事故情報受付窓口」(ドクターメール箱)。センターによると今年7月20日までに医師から寄せられた情報179件のうち9件が、健康食品の摂取による薬物性肝障害と診断された情報だったという。
センターがメール箱に寄せられた情報を公開したのは初。メール箱に一定の情報数がまとまったこと、そして「(薬物性肝障害は)健康食品等でも発症することがある。発症頻度は稀だが、重症化する場合もある」(センター)ことを理由に公開し、注意喚起に踏み切ったという。
9件の情報は、センターが因果関係を直接調べたわけではないようだ。ただ「医師の診断」があるのは重いと言える。これを受けてセンターも、情報が寄せられた9件と薬物性肝障害の間には因果関係があると判断し、注意喚起を行ったとみられる。
一方、別の医師が診れば、別の診断・判断を示す可能性もあるだろう。
都消費生活総合センターが4月に公表した機能性表示食品の健康被害事例。事例は都内在住の男性が寄せた情報を基にまとめたもので、都として因果関係を確かめたものではなかったが、当初の資料には「担当医の所見は『当該機能性表示食品による薬物性肝炎』」との記載があった。
だが、この商品と同一とみられる機能性表示食品の販売会社が、男性の診断書を作成した担当医に聞き取りを行ったところ、販売会社によると担当医は、「摂取タイミングから、本製品が疑わしいと判断しているが、本製品が原因であるかどうかは判断できない」などと回答。
また、第三者の複数の有識者(薬剤性肝炎の専門家、肝炎の臨床経験が豊富な複数の医師)にセカンド・オピニオンを依頼したところ、「因果関係ありと断定することはできない」や、都の事例の中では説明されていなかったが、男性は当該商品の摂取とほぼ同時期に複数の医薬品を摂取していたこともあり、「本製品を原因の第一とするには困難と考えられる」「併用薬物による健康被害の可能性が否定できない」などといった評価が寄せられたという。
このように健康食品と健康被害の因果関係を判断するのは医師など専門家でも難しい面がある。だが、この都の事例は、前述の記載も含めて後に削除されたものの、商品名こそ明記していなかった一方で訴求機能や内容量など商品特徴を詳しく記載。そのため商品名を容易に推測できる内容となっていた。
国民生活センターは3日の注意喚起でそうした情報公開はしていないが、都のような情報公開のやり方がまかり通れば、風評被害をいたずらに煽ることになる。
ただセンターにしても、メール箱に寄せられた情報9件のうち1件について「通販で購入した特定保健用食品の粉末青汁」と報告書に明記。トクホでも健康被害が起こる可能性を消費者に伝えたかったのだろうが、ならば因果関係をはっきりさせ、具体名を示したうえで注意喚起したほうが、消費者にとってもためになりそうだ。
一方で、因果関係ははっきりしていないにせよ、健康食品による健康被害を訴える消費者は決して少なくない現実がある。
消費者庁と国民生活センターが連携して運用している「事故情報データバンクシステム」。健康食品に関して「重大事故」と判断された情報は、検索可能な09年以降13件。また、今年6月の1カ月間のみで登録された情報は、実に128件にものぼる。
「事故概要」をみると、定期購入の解約トラブルの訴えなどが記載されているだけのものも複数見受けられ、全てが健康被害を訴えているものとは限らない。とはいえこれだけの数が毎月積み上がっている現状は、看過できないといえそうだ。