ロンザ社 相次いだ企業買収 今後の展望 (2017.8.24)
米カプセルメーカー大手カプスゲルの買収手続きの全てを先月6日に完了させたスイスのファインケミカル・ヘルスケア大手のロンザ。昨年9月には、サプリメント原料開発・販売の米インターヘルス・ニュートラシューティカルを買収してもいる。ヘルスケア関連企業を相次いで買収した目的と将来展望について、ロンザ米国法人のアオウァテフ・ベラミン学術担当責任者に話を聞いた。
川上から川下まで 企業能力拡大
──カプスゲルの買収額は約6500億円(55億㌦)と大きなものでした。買収の狙いは。
数ある企業の中からパートナーを選び抜いた。カプスゲルは従業員が世界各国で3600名、顧客も世界100カ国に延べ4000社以上が存在する。そのような企業がロンザ傘下に入ったが、狙いは規模の拡大ではない。エビデンスに基づく有効成分を供給していくのみならず、それを製剤化するという、最終製品に近い部分までカバーできるようにするのが狙い。ロンザとしては初の試みだが、医薬品やサプリメントといったヘルスケア製品に関する企業能力を大きく拡大できるものと考えている。
これまでは顧客に有効成分を原料として提供するだけだった。しかし今後はそれだけではなくなる。例えば、実用面の課題として、従来よりもいかに少ない摂取量で有効性を発揮させるかどうかという課題がある。ロンザも長年研究を続けている課題だが、今後は、その課題の解決を製剤の面から実現していくようなことも考えられる。そのように製剤の側面からも効果的、かつ高品質な製品も顧客に提供していきたい。
──インターヘルス買収の目的について。
ヒューマン・ニュートリション(サプリメント)分野の製品ポートフォリオを拡充するためだ。この分野におけるロンザの製品は、これまでカルニピュア(Lカルニチン)、レジストエイド(西洋カラマツ抽出物)、ナイアシンの3つに限られ、主な対応可能領域についても、スポーツニュートリション、ウエイトマネジメント、免疫サポートの3つに限定されていた。
そこに、UC‐Ⅱ(非変性Ⅱ型コラーゲン)をはじめとするインターヘルスの15以上の製品群が新たに加わった。それに伴い対応領域も、ジョイントヘルス(関節ケア)や認知機能などが新たに加わったことで、おおよそ10領域まで広がることになった。
──日本市場におけるサプリメント原料事業の今後について。
日本独自の法規制との兼ね合いもあり、インターヘルスの全ての製品をすぐに市場導入できるわけではない。そのため当面は、市場性も踏まえて、関節ケアのUC‐Ⅱに力を入れていくことになる。
関節ケア領域はグローバルの重要課題ともなっている。UC‐Ⅱについては最近、主要顧客のファイザーが臨床試験を実施し、学会発表もしている。少量摂取で変形性関節症に対して効果を発揮するという、セールスポイントの明確さも魅力だ。
ヒューマン・ニュートリション分野に関してロンザは高齢者層をこれまで必ずしも主要ターゲットにしていなかった。しかし社会の高齢化というのは世界共通の課題であり、無視できない。その中でカルニピュアについても今年、アミノ酸との複合摂取に伴うサルコペニアに対する有効性を検証した臨床試験結果について、論文発表している。
この試験では、筋肉量の増加に伴う歩行能力の向上が示唆された関節の健康に対する有効性を示すデータがカルニチンでも最近発表されているが、作用機序は異なることから、カルニピュアとUC‐Ⅱを組み合わせるのも面白いだろう。今後、両成分の相乗効果に関する臨床研究を行うことも念頭にある。
【写真=インタビューに応じるベラミン氏(7月28日、東京中央区・ロンザジャパン本社)】