消費者庁 特別用途食巡り事務連絡 (2017.9.7)
消費者誤認の可能性を憂慮
消費者庁食品表示企画課は8月31日、「特別用途食品と誤認されるおそれのある表示について(周知)」とする事務連絡を各都道府県衛生主管部あてに発出した。日本健康・栄養食品協会が同21日に同庁長官にあてた要望書「特別用途食品制度の円滑な実施について」を受けたものとみられる。事務連絡には法的拘束力はない。
消費者庁は事務連絡で、電解質組成を調整した清涼飲料水などで「経口補水液」の名称とともに「脱水時」「熱中症対策」などと広告で表示したりすることで、病者用食品であるかのように表示する事例が散見されると指摘。こうした表示は健康増進法第26条第1項の規定に違反するおそれがあるとし、食品関連事業者に対し周知を図るよう伝えた。病者などの健康の保持・回復等の特別な用途を食品に表示するには、国の許可を受ける必要がある。
事務連絡ではまた、脱水予防などのために短時間で大量に摂取した場合のナトリウム過剰摂取などによる健康リスクが生じるおそれがあることの周知も促した。
一方、日健栄協の要望書では、大塚製薬の特別用途食品「OS‐1」の許可表示を引き合いに出し、「経口補水液」の文言が一般食品に使用される事例が見受けられるとして表示の改善指導を要望。一般的に行政から規制を受ける側の業界が、逆に行政に指導を求めるのは極めて異例といえる。ただ、こうした状況を放置すれば、消費者が特別用途食品と誤認する可能性があるほか、「事業者の許可に向けての製品開発や許可取得の意欲等を損なうことになる」などと訴えた。
しかし、「経口補水液」の文言は一般用語化しつつあるのが現状。それもあり日健栄協は、「経口補水液の表現だけを問題視しているわけではない」(栄養食品部)と話す。
また、消費者庁も、「経口補水液」の言葉自体を問題視しているわけではなく、電解質の補給など特別な用途を表示したうえで、経口補水液と表示することが病者用食品と誤認される可能性があるとの認識。そのため、健増法違反に該当するかどうかは「商品及びそれに類する広告表示などトータルで判断される」(食品表示企画課)と言う。
一方で、事務連絡では、熱中症対策などと表示する清涼飲料水と、特別用途食品を区分しない状態で同一の棚に陳列することでも、特別用途食品と誤認される可能性を指摘。こうした場合も健増法に違反するおそれがあるとしている。
健増法に違反おそれも指摘
店頭での陳列や表示に関しては日健栄協も問題視しており、消費者庁に提出した要望には「OS‐1に類似する一般食品の販売事例」も添付。ドラッグストアやスーパーといった実際の売場で撮影した写真を使い「問題点」を指摘したもので、例えば、OS‐1の許可表示中の文言に類似する「発汗時、脱水時の水分補給に適しています」という表現を容器包装に表示している清涼飲料水の事例を提示。また、そうした食品のポップに「防ごう、熱中症」「消費者庁許可」「ウイルス性の感染症には水分補給」──などと表示されていたり、特別用途食品の隣に陳列されていたりする事例を示している。
実際、いわゆる健康食品などの一般食品が特定保健食品や機能性表示食品と誤認されかねない表示などを行っていれば、決して小さくない問題になる可能性が高い。その点、「特別用途食品に関しては認識が甘い」と日健栄協の栄養食品部は指摘。こうした状況がまかり通れば、「特別用途食品制度を運用するうえで危機」になるという。