将来の食料産業 「健康」が重要視点に(2017.9.21)


 農林水産省は8日、「食品産業戦略会議」(座長・中嶋康博東京大学大学院教授)の中間論点整理を公表した。この中で「健康」に関しては、将来の国内外市場に共通した商品差別化、マーケット深堀りのための重要な視点になるとした。11月にまとめる最終報告書にも盛り込まれる見通しだ。

 同戦略会議は、少子・高齢化、人口減少を背景に、将来に向けた日本の食品業界のあり方を議論するため、5月に農水省食料産業局長主催の形で設置され、これまで5回の会合を開催した。

 会議の最大のポイントは、食品業界の輸出・海外展開策の検討。農水省の調べでは、国内の飲食料市場は、1995年の83兆円から2015年に76兆円に減少しているが、50年にはさらに20%程度縮小し、一方で海外市場は、アジアを中心に急成長し、09年の340兆円から20年には680兆円に拡大するとしている。

 こうした状況の中、同省では「最近の機能性表示食品の増加に見られるように、健康に資する食の機能性が、縮小する国内市場の深堀りや拡大する海外市場における日本商品の差別化、強みになる」(農水省食品製造課)と見ており、「健康」が食品業界の重要な視点のひとつになっていくとしている。

 また、国内の飲食料市場については、1995年以降、飲食料最終消費額の減少が続いており、1世帯当たりのエンゲル係数も2005年頃から上昇し、16年は“バブル経済期”以前の1987年の水準に戻りつつあるとしている。

 ただ、飲食料最終消費額は減少しつつも加工食品の消費額は伸びているため(外食と生鮮食品は減少)、農水省では「単に“健康”を盛り込めば国内市場が拡大するというわけではない。国内市場については動向をよく見ていく必要がある」(同)としている。

 中間論点整理では、国内市場と海外市場のどちらに力点を置くか、商品に“健康”を含めたどのような付加価値を付けるかなど、各社の経営判断が重要になるという。


Clip to Evernote

ページトップ