活発化する機能性農水産物(2017.10.12)
農水産物の機能性表示に向けた取り組みが加速している。検討段階の品目だけでも相当数に上る見通しだ。関係者の話によると、農林水産省も農林水産物の輸出促進策のため、機能性表示食品制度における生鮮食品の扱いについて、消費者庁との連携を強化していく考えのようだ。
佐賀大 キクイモで届出準備 イヌリンを関与成分に
佐賀大学の機能性農産物キクイモ研究所が、キクイモ加工食品の機能性表示食品の届出に向けた準備を本格化させている。来年にかけて同大医学部の協力でヒト試験も実施する予定で、早ければ来年中の届出書類提出を目指してデータを集積していく。
機能性関与成分はイヌリンで、ヘルスクレームは整腸関係や血糖値、血圧低下などが想定されている。すでに食品関係会社や地元企業、農業生産団体などと協力を進めており、イヌリンの含有量が高くなるキクイモの栽培技術に目途をつけたほか、キクイモのレシピ開発なども行っている。
佐賀県は人工透析患者数の伸び率で全国ワーストの上位にランクしているほか、高血圧疾患による人口別死亡者数も全国上位にある。佐賀大学機能性農産物キクイモ研究所では、キクイモの機能性表示食品化で地域の課題に貢献したい考え。
また、キクイモ中の抗酸化成分を活用した化粧品開発も有望視されており、同県が取り組む「コスメクラスター構想」での展開も目指していく。
電磁波による非破壊測定技術を開発 生鮮品届出に追い風 産総研
機能性表示食品制度で生鮮食品の届出を行う際に重要なポイントとなる糖度や酸度の非破壊分析機器の開発が加速している。野菜や果実類などの生鮮食品は、機能性関与成分のコントロールが難しく、ウンシュウミカンの場合は、糖度と関与成分のβクリプトキサンチンが相関関係にあるため、出荷時に非破壊の糖度検査を行うことで、一定の成分含有を担保している。
ただ、現在の近赤外線を用いた非破壊検査では、色味の異なる個体や皮の厚い個体、水分含量の違いなどによって、計測の精度が低下する場合がある。特に水分含量は近赤外線測定の大きなネックとなっている。
産業技術総合研究所の電磁気計測研究グループはこのほど、電磁波を用いた非破壊検査技術を開発した。生鮮品の糖度や酸度、水分含量などを、包装・箱詰めされた状態で、大量かつ数秒で計測できるという。
現在、生鮮食品の届出は、ウンシュウミカンと大豆もやしの2種類しかないが、リンゴやトマトが有望視されており、特にトマトは糖度と機能性関与成分のリコピンに相関関係がある可能性が高いことが、最近の試験で分かりつつある。
北大 ダルスで健食化取り組み ヒト試験も開始
北海道大学が海藻のダルス(紅藻類)の機能性食品化の取組みを加速させている。ヒト臨床試験(UMIN登録済)も実施中で、加工食品化も急ピッチで進めている。現在のところ機能性表示食品としての届出は想定していないが、サプリメントとしても有望視されており、健康志向の素材として、普及を図る考え。
ダルスは、日本では北海道・本州北部沿岸に広く分布しており、特に昆布養殖のロープに繁茂することで知られる。日本では喫食習慣がないが、カナダやアイルランドなどでは古くから喫食経験がある。
乾燥重量当たり40%のタンパク質を含み、主要成分は「フィコエリスリン」。そのペプチドはACE阻害作用や抗炎症、抗酸化、血糖値上昇抑制作用が期待されている。フコイダン、フコキサンチン、鉄分、ビタミンB6なども豊富に含有するとされる。
北大では、今秋からフィコエリスリンを機能性関与成分とする糖代謝関連のヒト臨床試験を開始しており、血糖値上昇抑制作用などでエビデンスを集積する方針だ。