ASCON届出評価 高まる事業者負担 (2017.10.26)
機能性表示食品の届出情報を第三者の立場で独自に評価している市民団体ASCON(消費者市民社会をつくる会、阿南久代表理事)の「科学者委員会」が、評価方式を変えるという。科学者委が作成した届出情報点検表への記入および評価を届出者自らに行ってもらい、その結果を科学者委で検証する方式に変えるとのこと。ただ、機能性表示食品はそもそも届出者が機能性等の科学的根拠を自ら評価し消費者庁に届け出ている。よって新評価方式は、届出者に二重の「自ら評価」を求めることになる。届出者からの疑問を呼びそうだ。
新方式による評価は届出番号「B」番台から適用するという。
ASCON科学者委による届出評価方式には変遷がある。当初は、科学者委自ら届出情報を個別に調べ、自ら点検表に記入し、評価も自ら実施していた。
この方式が変更されたのは届出番号A171からの評価。評価は科学者委で行う一方で、点検表の作成は届出者に求めるかたちになった。それが今後は、届出者自らに点検表の作成から評価までを行ってもらい、その結果検証の部分だけを科学者委が担うことになる。
科学者委は今回の評価方式の変更について「事業者の自己点検および自己評価の促進を願って」などと説明している。その前の変更については「事業者の自己点検の促進を願って」──しかしどうだろう。願ったのは届出評価に必要な「手間ひま」の削減も同様ではなかったか。
実際、10日にASCONが都内で開いた機能性表示食品に関する意見交換会で次のような発言が聞かれている。
「けっこう大変」
「(機能性の根拠に関する届出様式は点検表のように)分かりやすくない」
いずれも発言したのは届出評価結果について報告した科学者委副委員長・鈴木勝士氏(日本獣医生命科学大学名誉教授)。届出評価が「けっこう大変」なのはその通りだろうが、それに協力する事業者のほうこそ「けっこう大変」ではないか。
もっとも、科学者委は「少ないメンバーで評価している」(阿南理事長)という事情がある。ASCONは科学者委のメンバー構成を明らかにしていないが、鈴木副委員長含めて2~3人といわれる。
また、第三者の立場で届出評価を継続的に行っているのはおそらくASCONのみだ。「事後チェック制」を柱の一つとする機能性表示食品制度の主旨を踏まえ、ASCONの取り組みに理解を示す業界関係者も少なくない。
ただ、新評価方式が届出者に受け入れられるかどうかは微妙だろう。新方式に移行される前の届出評価でさえ、科学者委の要請に応じなかった届出者が複数出ているもようだ。
ASCONの届出評価は事業者の協力無くしては成り立たない。評価にあたっては企業との「対話」を重視していると言うのだから尚更だろう。科学者委と同様に、多くの企業も人手不足。自らのことばかりでなく、事業者の負担も考慮する必要がある。
評価結果 第3弾公表 今度は「合剤」を疑問視 それって食品の話?
消費者庁元長官の阿南久氏が理事長を務める市民団体「ASCON」は10日、機能性表示食品の届出情報の独自評価結果をASCONのウェブサイトで公表し、事実上の疑義申立を意味する「見解不一致」評価が9件あったとした。一方、日本の民法では未成年と規定されていることを理由に、これまで見解不一致評価を行っていた18~19歳の被験者を含む届出10件については、消費者庁が6月に見解を明らかにしたのを受け、見解不一致を取り下げた。
評価結果の公表は今回で3回目。ただ、評価対象は制度施行初年度の届出にあたるA171から同310まで。すでに1000件を超えている届出のスピードに評価がまったく追いついていない状況だ。だが、評価が滞っている間に販売が始まる商品も少なくない。公表される評価結果は届出者の販売活動に影響を与える可能性がある。
届出評価を行うASCON科学者委員会が見解不一致評価を今回行った届出の中には、抗酸化物質を機能性関与成分にしたものがある。最終製品の臨床試験を届け出たもので、科学者委は製品に含まれる同じく抗酸化物質のビタミンEに着目。届出表示の根拠がビタミンEではなく機能性関与成分による効果だといえる「根拠が不明」などと指摘している。
一方、科学者委が今回特に疑問視したのは、機能性の根拠が最終製品の臨床試験、研究レビューにかかわらず、1商品で複数の機能性関与成分を届け出たものだった。9件中4件がこれに該当する。
この4件に対して科学者委は、最終製品の臨床試験を届け出たものに対しては「合剤にすることの科学的根拠が不明確」、研究レビューには「単独の効果は理解できるが、合剤にした時の作用が相加作用か、相乗作用か、あるいは拮抗作用か示されていない」などと指摘。指摘された届出者はそれぞれ反論したが、科学者委は受け入れず、「見解不一致」と評価した。
研究レビューの届出に対して科学者委は、複数の機能性関与成分を配合する「理由」についても説明を要求。理由の一つには、複数の成分を同時に摂取できる経済的メリットが消費者にあることが考えられるが、それによって「好ましくない作用が行らないことをどう担保するのか」と届出者に迫った。
科学者委の言う「合剤」の機能性表示食品をめぐっては、届出表示で一つ以上のヘルスクレームを行っている場合が目立つ。新規の機能性関与成分を増やすのが難しい現状では差別化の有効手段だが、科学者委の評価を受け、届出書類を確認する消費者庁の「審査」基準に新たな考え方が追加される可能性がある。同庁からの不備指摘の内容に変化がないかを注視する必要がありそうだ。
だが、「合剤」とは一般的には医薬品用語で、食品に用いる言葉とは言えない。「配合剤」とも呼ばれ、複数の成分を組み合わせて効果を高めたり、逆に副作用を抑えたりする作用を狙った医薬品を指す。こうした医薬品としての合剤と、そうした作用を狙っているわけでもない機能性表示食品の「合剤」を、同じ土俵に乗せて論じることには業界から強い反発が起きそうだ。議論が求められる。