消費者庁が届出検証 臨床試験・安全性で報告書 (2017.10.26)


 機能性表示食品の科学的根拠として届け出られた最終製品の臨床試験論文や、喫食実績のみで安全性評価を行った届出に対する検証・調査報告書を消費者庁が16日、ウェブサイトに公開した。機能性表示食品の検証事業の一環として16年度に実施していたもので、届出資料の質を高める方策などを検討することが目的。そのため届出個別の検証結果は明らかにしていないが、報告書の端々で厳しい指摘が見られる。

 今回の検証は、15年度実施の「研究レビューの質」検証事業に続くもの。届出資料を個別に検証し、全体的な課題を抽出しており、臨床試験に関しては、論文投稿先として「推奨される学術雑誌」の特徴や、利益相反に関する事項の記載例を提示。チェックリストまで用意した。一方、安全性評価に対しては、「軽微な有害事象であっても積極的に収集し、届出資料に記載すべき」などと指摘している。

 推奨される学術誌については第一に査読の「透明性」を挙げ、査読方針や査読標準期間等が公開されている雑誌が望ましいとした。また、「研究成果を世界中に届けることが学術研究の重要な役割」との理由から、「英文で記載され得る(日本の学術誌であっても)こと」も挙げている。

 一方で、「COI(利益相反)を疑われ、否定的にみられる可能性がある」論文投稿先として、「業界団体・協会が主催する学術雑誌」を挙げた。具体名こそ直接的には挙げていないものの、信頼性に対する疑問を提示したかっこう。「届出のための根拠論文は、基本的には科学的かつ客観的な査読が行われると考えられる雑誌に投稿するのが賢明だろう」という。

 報告書は約120頁のボリューム。同庁の岡村長官は18日の定例記者会見で報告書の取り扱いについて「必要に応じてガイドラインの改正や質疑応答集(Q&A)に反映させるなどの活用を考えている」とコメント。これまでの制度運用を考えれば、すでに不備指摘を行う際の参考にしている可能性がある。

今後Q&Aに反映か
 報告書を取りまとめたのは、同庁から事業委託を受け、みずほ情報総研が設置した、15名の識者で構成されるワーキンググループ(WG)。取りまとめは今年3月末までに終わっており、同庁は、公表までの間に報告書の検証・検討を行っていたとみられる。

 WGの委員長を務めたのは、「臨床試験」が研究レビューの質検証事業でもWG委員長を務めた上岡洋晴・東京農業大学大学院教授、「安全性」は国立健康・栄養研究所の梅垣敬三氏。報告書では安全性について「健康食品で重篤な被害が起こった事例はほとんどなく、大部分が軽微な症状」と健康被害を巡る実際を説明したうえで、消費者が適切に利用できていないケースもあるため、因果関係の証明は「極めて難しい」と指摘。そのため、健康被害情報収集体制の仕組みを適切に機能させるなど「届出者による適切な対応」が求められるとし、その実態を把握する検証も必要だとしている。

 なお、今回の検証事業で評価対象にされたのは、「臨床試験」が昨年9月末までに届出が公表された34件、「安全性」は、喫食実績のみで安全性の評価が十分と届出で評価された113件のうち重複を除く71件。



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