機能性表示「Q&A」公表 ガイドラインを補完(2017.10.12)


 機能性表示食品制度の改善に向けた消費者庁の取組みが進んでいる。政府が6月に閣議決定した規制改革実施計画を受けたもので、曖昧さが指摘されてきたガイドライン(GL)を補完する役割を担う質疑応答集(Q&A)は先月29日、実施期日を3カ月近く前倒す形で公表。同27日には、不備指摘までの所要日数の上限を「55日」とする届出手続の運用改善目標などを明らかにした。一方で届出の事後監視も強めている。今年度は60商品以上を対象に買上調査を行う。広告表示をめぐる初の行政処分の可能性も取り沙汰されている。

 Q&Aは同庁食品表示企画課長通知として発出した。構成は、「対象食品となるかの判断」「安全性の根拠」「機能性の根拠」──など全9項目87問。規制改革推進会議の関係者は「Q&AはGLと比べて改正が簡便」と話しており、必要に応じて追加や見直しが順次行われるものとみられる。

 Q&Aをめぐっては、同課が取りまとめた20機能に及ぶいわゆる「NG」扱いの機能性表示例が盛り込まれる可能性もあったが、今回は見送り。GLに記載のないNG表示の取扱いをめぐっては、事業者の予見可能性が高まる一方で、届出表示の工夫や科学的根拠に関係なく、一律に表示が禁じられる可能性が業界に懸念されていた。

 同課はQ&Aの制度上の位置付けについて、「(Q&Aは)事業者からの問い合わせや届出資料で不備の多い事項のうち、GLにおける考え方を明確化すべきと判断した事項について取りまとめたもの」としたうえで、「届出はGLに従って行われることになるが、その際はQ&Aも参照していただき、適切な資料を届け出ていただきたい」と説明。Q&AはGLと一体化された事実上の届出指針ということになる。

 「指針」にしては曖昧であることが指摘されてきたGLの解釈がQ&Aで示されたことで、事業者の負担軽減が期待される。ただ、業界関係者からは、「届出にかかわる重要事項と、単なる事務手続きのような事項が一緒くたにされていて分かりにくい。全てに目を通して欲しいということなのだろうが、もう少し整理してもらいたかった」と不満の声も上がる。

 「後から言わないで欲しい」との声も。
 例えば「問31」に対してだ。このQ&Aでは、最終製品の臨床試験と研究レビューに共通して必要な機能性の科学的根拠について、特定保健用食品と同様に、プラセボ摂取群との群間比較で肯定的な結果が得られている必要があると記載されている。

 この点に関し、研究レビューについては、「レビューワーが適切に判断することが前提」であるため、前後比較の論文を含めること自体は「差し支えない」としつつ、「前後比較での有意差しかみられない論文のみでは、機能性の科学的根拠としては不十分」などとされた。

 届出資料の確認を行う同課は、前後比較で肯定的な結果が得られている文献のみを採用した研究レビューが届け出られた場合、不備指摘を行っている。しかし以前は、届出撤回が相次ぐグルコサミンの研究レビューに代表されるように、そうした研究レビューでも届出を受け付けていた。

 機能性の根拠について、プラセボ摂取群との群間比較で肯定的な結果が得られている必要は、GLの「用語集」で暗示的に示されているに過ぎない。それをQ&Aで明確にした形だが、逆に混乱が広がる可能性がある。「前後比較だけの研究レビューはほかにもあるのではないか」と業界関係者は懸念を示す。

来年度 制度見直し検討か
 規制改革実施計画では、機能性表示食品制度の運用改善目標の設定、目標を実現する工程表の策定、届出書類の簡素化を9月末までに実施するよう求めていた。消費者庁はこれにしっかり対応。それぞれ先月27日に公表した。

 まず、制度の運用改善として、事業者の要望が最も大きかったといえる届出手続きの運用改善ついては、不備指摘までの所要日数に関し、「2018年度末時点に55日を上回らないこと」を目標に掲げた。

 ただ、現在の差し戻しまでの所要日数も55日前後。すでに以前と比べれば大幅に短縮化されており、そのためこの目標は、「少なくとも現状維持」と言っているのと変わらないことになる。「55日」をさらに短縮できるかどうかが、実質的な改善目標となりそうだ。

 また、届出資料の簡素化目標については、届出資料の入力項目に関し、事業者による入力が必要な項目数の「20%削減」を掲げた。規制改革実施計画が全府省に対し、行政手続コストを20年までに20%削減するよう求めていることに応じた。

 一方、運用改善目標を実現するための「工程表」を見ると、業界団体等による届出の事前点検体制の構築は、来年3月末までとされた。その後届出データベース(DB)に反映させるとしており、どこに事前点検されたかが一目で分かるように届出様式を一部変更するもようだ。実施は来年度からとなる見通し。

 また、届出資料の簡素化項目の選定と、それに伴うGLの改正も来年3月末まで。その後DBへの反映作業に入る。
 一方、GLの分かりにくい点の見直しは年内に行う。この年内見直しの機会を捉え、制度対象に加える糖質・糖類に関する規定をGLに盛り込み、運用を始める場合も考えられる。植物エキス等のGLについては、年度末のタイミングに合わせるかもしれない。

 他方で、制度の改善や見直しをめぐっては、規制改革実施計画とはまた別の枠組みで、来年度にも新たな検討が始まる公算が高まっている。機能性表示食品の根拠法の食品表示法の附則(19条)に基づくものだ。

 附則では、施行3年後、施行状況を踏まえ、必要に応じて法規定の検討、検討に基づく見直しを行うことが定められている。先月15日、日本健康科学学会で講演した消費者庁食品表示企画課の赤﨑課長は、「法律に基づく規定。今年度(規制改革実施計画への対応など)いろいろと取り組んだうえで、(施行3年後にあたる)来年度、さらにこの制度を大きく伸ばすような検討に、どこかの時点で取り組むことになると思っている」と述べた。

 この検討では制度の大きな見直しを行う可能性も考えられる。消費者庁、業界ともに、制度運用を落ち着かせられるのは、しばらく先のことになりそうだ。

今年度も買上調査 対象60品超 関与成分を分析
 消費者庁は、今年度中に機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)の買上調査(検証事業)を行う。機能性の機能性関与成分およびトクホの関与成分に関する検証を行い、それぞれの品質管理のあり方を検討するのに資する基礎資料も得たい考え。

 調査対象は、現在販売されているトクホ40品以上、機能性60品以上。関与成分および機能性関与成分の調査件数としては、30成分程度を見込む。それぞれの含有量を分析し、表示値と実際の含有量の妥当性などを評価する。

 調査は第三者に委託して実施する。委託先には来年3月23日までに報告書を取りまとめてもらう。委託先は今月19日に決定する見通し。トクホの許可試験で関与成分分析を担当する国立健康・栄養研究所や、国立医薬食品衛生研究所などが手を挙げそうだ。

 機能性表示食品の買上調査は3年連続で実施されることになる。販売が開始された商品の増加に伴い、調査件数も増えている。51件が調査対象にされた前回の調査では、6件で機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていたとされる。

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